新しいフェスティバル— Electric Japan 2022 — が盛況のうちに閉幕

(c) Mayumi Hirata
2020年5月に開催が予定されていたものの、コロナ禍により延期となっていた日本にフィーチャーした新しいフェスティバルがロンドンで始動。英国デビューとなる若手日本人アーティストを中心に紹介する目的の「ELECTRIC JAPAN 2022」がロンドン西部のおしゃれタウン、ノッティングヒルにあるThe Coronet Theatre(コロネット劇場)で5/10~6/11の1ヶ月間に渡り開催された。

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参加アーティスト
(パフォーミングアーツ)
“F/BRIDGE” / DANCE PJ REVO(田村興一郎)
“Trigger Point – Nature” “A Hum San Sui” / Kentaro Kujirai & Barabbas Okuyama
(鯨井謙太郒&奥山ばらば)
“UNITED ME” / Ney Hasegawa(長谷川寧/冨士山アネット)
Tomoco Kawaguchi(川口智子)
“See Art Through the Body” / Fukiko Takase(高瀬譜希子)
“Tristan and Isolde” / Saburo Teshigawara(勅使川原三郎)—>英国での認知度が高く、若手枠ではないものの2019年に同劇場で公演を行ったことから、今回のフェスの大トリとして参加。
(展示)
Photo exhibition “Jump!” “irezumi” / Mayumi Hirata (平田真弓)
Exhibition of KEI KAGAMI Engineering Couture / Kei Kagami (加賀美敬)
(ビデオ上映)
“Intensional Particle Online” / Hiroaki Umeda(梅田宏明)
2年前の春に延期が決まった後も、新たな実現に向けて日英間で対話を重ね、ウェストエンドの再開、英国の新たなコロナ対策の緩和傾向を注視しながら2022年5月に開催を決めたコロネット劇場オーナーで芸術監督のAnda Winters(アンダ・ウィンターズ)。ロンドン市民がまだ観たことのないような海外からの舞台を積極的に紹介していきたいと日頃から語っている彼女は今回のような日本関連の企画は今後も色々な形で続けていきたいと話す。
—日本からフェスティバルに参加した4組の若手アーティストたちの活躍を写真で振り返る—
カーテンコールで同世代のロンドンの若者たちから熱いエールと拍手を受けた田村興一郎率いるDANCE PJ REVOの“F/BRIDGE。” まずは今、ノリに乗っている彼らの勢い溢れるパフォーマンスで幕を開けた「ELECTRIC JAPAN 2022」。

Photo by Mirika Ishida

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次に、ヨーロッパに比べまだまだ舞踏がそれほど浸透していない英国で、満場の観客たちの度肝を抜きButohを知らしめたのが鯨井謙太郒&奥山ばらばのダブルビル。奥山ばらばのソロ“Trigger Point – Nature”と二人のデュオ作品“A Hum San Sui”で一気にロンドンっ子たちの心を鷲掴みにした。

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コロネット劇場のスタジオスペースで観客参加型のパフォーマンス“UNITED ME”を上演した冨士山アネットの長谷川寧は「作品内で参加している人が自分の意見を述べるシーンがあるのですが、小学生ぐらいの子供がはっきりと持論を展開しているのには驚きました。さすがディベートの文化が根付いている英国だな、と。参加型ということで、初めは尻込みしていたようですが、ショーが進むにつれ、積極的に楽しんでくれているのがわかって、それがよかったなと感じています」と感想を寄せてくれた。

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コロネットの大きな魅力の一つである、地下のバーエリアでオリジナルの演奏パフォーマンスを行ったのが演出家川口智子と彼女のチームメンバーたち。政治的、歴史的理由で消えていった“(消え行く)言語”をテーマに、チームの中心メンバーである「時々自動」の鈴木光介の音楽に多言語のオリジナル歌詞をのせ、アバンギャルドで唯一無二のパフォーマンスを展開し、ノッティングヒルのアート大好きピープルたちを大いに喜ばせた。

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フェスティバルの大トリは2019年3月に引き続いて2度目のコロネット劇場登場となった勅使川原三郎と佐東利穂子のダンス公演「トリスタンとイゾルデ」。
8日間に渡り行われた公演は多くのメディアで取り上げられ、その注目度の高さはさすがに世界の勅使川原であることを示した。ここで、そのごく一部を紹介しておく。
* everything theatre — 5つ星とともに
“A breath-taking and exhilarating depiction of Wagner’s epic tragedy, stripped back to portray the distilled, vital emotion of the protagonists.”
「ワーグナーの壮大な悲劇を息を呑むほどの、そして大いにワクワクさせられる舞台に仕上げた今作は主人公たち(トリスタンとイゾルデ)の凝縮し、生命感あふれる感情を描くために徹底的に解体されている」という見出しを掲げ評している。
* British Theatre Guide
It’s like qi gong. Or careful calligraphy. Or slow watching a single artwork. …… In squares and rectangles of space (for him), circular spots (for her), he gives an illusion of ethereal lightness and swiftness. Is he real or a mirage? It’s a magic lantern show… and reminds me initially of Russell Maliphant and Michael Hulls.
まるで気功のよう。または丁寧に書かれた書、もしくはある芸術作品をゆっくりと味わう感じ。正方形や長方形の空間(彼にとって)で、円形の点(彼女にとって)で、勅使川原はこの世のものとは思えない軽さや迅速さの幻影を示す。彼は実在する人物なのか、それともそれは蜃気楼なのか。これは魅惑的なランタン(灯籠)のショーである、、、観た瞬間にラッセル・マリファント(英国人のコレオグラファー)とマイケル・ハル(マリファントの作品に多く関わってきた照明デザイナー)の舞台を思い起こした。
初めに参加アーティストを列挙したように、今回のフェスティバルでは期間中に舞台上演だけでなく、歴史ある映画館だった劇場内の壁やスタジオ空間で写真(平田真弓)やファッション(Kei Kagami)作品の展示も行われ、”今やランチに寿司!”が当たり前になりつつある英国人たちの興味をかき立てる総合的な今日の日本文化紹介の企画となっていてた。
平田真弓(今回の舞台写真の多くを提供していただいた英国在住のフォトグラファー)氏の写真展。
日本有数の彫師、初代彫蓮の作品を集めて展示した”IREZUMI”

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平田真弓氏の代表作、シリーズ”JUMP!”

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コロネットで写真展示を行った写真家平田真弓氏のセルフポートレート。

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*Jstages.comでは今後のコロネット劇場での日本関連企画に賛同、協力を続けていくので、ロンドンでの公演にご興味のある方はお問い合わせフォームからお問い合わせください。