The backbone of Shakespeare's Hamlet

イアン・マッケラン50年ぶりにハムレットを演じる

A human skull
(c) Samantha Hurley / Burst

The Guradian とWhatsOnStageから抜粋

この度、映画「ロード・オブ・ザ・リング」の顎髭にとんがり帽子の魔法使いガンダルフ役や舞台NTライブ(National Theatreの人気舞台を映像化したもの)「誰もいない国(No Man’s Land)」の自称詩人のスプーナー役で日本でもファンが多いイアン・マッケラン(Ian McKellen)が50年ぶりにシェイクスピアのハムレット役を演じることが発表された。

このニュースに81歳のマッケランがハムレット?ってどんなハムレット?!と思われる方が大半であろう。

ジョンソン首相は7月4日から劇場再開を容認したが、それはライブでのパフォーマンスでなければ、という条件付きだ。

8月の目玉プログラムとしてマッケランのハムレットを打ち出したロンドン校外のTheatre Royal Windsor(王立ウィンザー劇場)、劇場の初代芸術監督(May 2020~)で演出家のショーン・マサイアス(Sean Mathias—今回の舞台を演出)はどのようにしてこの難題に挑むのだろうか。—ちなみに今回主役を演じるマッケランとマサイアスは以前パートナー関係にあった旧知の間柄。

マッケランがNottingham Playhouse(ノッティンガム劇場)で革ジャン姿でハムレットを演じたのが彼が31歳の時、戯曲の中で墓掘りが言っていた所によるとデンマーク王子ハムレットは30歳だそうだから当時は年相応の役を演じていたと言えるのだが、近年年相応のリア王役を見事に演じてきたマッケランは今回の若き王子をどのように演じるのだろうか。

一方、英国ではこのところ高齢のキャストによるシェイクスピア劇がしばしば上演されていて、2010年には老人ホームという設定の「ロミオとジュリエット」が、2014年にはロンドンの老舗劇場Old Vicで82歳のJames Earl Jonesと76歳のVanessa Redgraveによる「から騒ぎ」が上演されている—演出はMark Rylance。

とは言え、若者の象徴であるハムレット、近年では20代前半の役者がハムレットの憂鬱を演じることも多くなってきている。役の実年齢よりも若い役者が演じることでハムレットの若さゆえのメランコリック、狂気、そして快活さをより鮮やかに表現することが出来るのかもしれない。

さて、話を戻すと、偉大な役者であることは間違いないマッケランの場合はこの見た目の年齢のギャップをどのように克服するのだろうか、、巧みなテキストの解釈?それとも韻のふみ方の妙?俊敏な動き??声の上げ下げの使い分け???まさか30歳の若者のフリをして飛び跳ねるわけはない、とは信じている。

多くのシェイクスピア舞台でそれまでに気にしなかったセリフに新しい発見があり新たに注目されることはよくあることだ。その意味で、このキャステイングはもしかしたら意外な方向で功を奏するかもしれない。例えば、戯曲の中に「they say an old man is twice a chile — 老人の幼児帰りというのがある」というセリフがある。またクローディアスがローゼンクランツとギルデンスターンにハムレットの変わりようについて説明するセリフで「(ハムレットの変貌ぶり—)外見ばかりか心の中も」(松岡和子訳)とある。となるとハムレット王子は突然にかなり年をとったというようにとれなくもなくなってくるからだ。

81歳のハムレットがかなりハイリスクであることは確かだが、このプロダクションが戯曲の柔軟性に挑みかけ、観客の共感を呼び起こすことに期待している。

***「ハムレット」は6月下旬からリハーサルが始まったが実際の上演日程については今のところ決まっていない。その時(再開)に向けて準備を始めたということだと制作サイドは話している。