マイケル・ビリントンのシェイクスピアランキング

英国の劇作家ウィリアム・シェイクスピアの戯曲は日本のみならず世界各地で400年以上上演され続けている、言わずと知れた演劇の代名詞である。

例えば先日、筆者は昼に「リチャード三世」、夜公演で「ハムレット」を観劇し、計7時間シェイクスピアの言葉の中で過ごすという日を過ごしたが劇場通いをしていれば、それもさもありなん。その1週間前には「リア王」で3時間半、さらに言えば、これからスケジュールにも定期的にシェイクスピア劇は顔を出す。

シェイクスピアのお膝元である英国で48年間有力紙The Guardianで演劇関連の記事を執筆し続け、1971年以降ほぼ毎日、10,000以上の劇評を書き続け2019年クリスマスをもって勇退したマイケル・ビリントン(Michael Billington)が選んだシェイクスピア戯曲の順位がこちら。

2020年以降も時折、演劇関連の記事をThe Guardianに寄せているビリントンが選んだランキングをあなたはどう受けとるだろうか。あなたのお気に入りは何位に入っているだろうか。

日英の違いを確かめながら、どうぞお楽しみください。(2026年4月22日The Guardian 掲載記事より)

(c) tim-wildsmith/unsplash

35: ヴェローナの二紳士(The Two Gentlemen of Verona)

34: シンベリン(Cymbeline)

— 2012年に蜷川幸雄演出、阿部寛、吉田鋼太郎主演の舞台がロンドン、バービカン劇場で上演された。

33: 二人の貴公子(Two Noble Kinsmen)

(フォーリオ版には含まれていないが、今日では正式にシェイクスピアの作品として認められているシェイクスピア最晩年の戯曲)

32: ヘンリー八世(Henry VIII)

(c) peter-burdon / Unsplush

ヘンリー八世が描かれた切手

31: 終わりよければすべてよし(All’s Well That Ends Well)

30: ジョン王(King John)

29: アテネのタイモン(Timon of Athens)

28: ペリクリーズ(Pericles)

— 2003年蜷川幸雄演出舞台がロンドン、ナショナルシアターで上演された。

27: じゃじゃ馬ならし(The Taming of the Shrew)

26: ヴェニスの商人(The Merchant of Venice)

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25: テンペスト(The Tempest)

ー 1988年蜷川幸雄演出舞台がエディンバラで、1992年にロンドンで上演された。

24: ジュリアス・シーザー(Julius Caesar)

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23: ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)

Photo AC

22: ウィンザーの陽気な女房たち(The Merry Wives of Windsor)

21: リチャード三世(Richard III)

Statue of Richard III in front of the cathedral in Leicester, England

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20: から騒ぎ(Much Ado About Nothing)

19: オセロー(Othello)

18: ヘンリー六世・三部作(Henry VI Parts One, Two and Three)

british-library / Unsplush

17: 間違いの喜劇(The Comedy of Errors)

ー 野村萬斎演出の狂言版「まちがいの狂言」は2001年にロンドン、グローブ座で上演された。

16: タイタス・アンドロニカス(Titus Andronicus)

ー 2006年蜷川幸雄演出舞台がストラットフォード・アポン・エイボンRSC劇場で上演された。

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15: トロイラスとクレシダ(Troilus and Cressida)

14: リチャード二世(Richard II)

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13: お気に召すまま(As You Like It)

12: 尺には尺を(Measure for Measure)

11: アントニーとクレオパトラ(Antony and Cleopatra)

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10: ヘンリー五世(Henry V)

9: 冬物語(The Winter’s Tale)

8: コリオレイナス(Coriolanus)

7: 恋の骨折り損(Love’s Labour’s Lost)

6: リア王(King Lear)

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5: マクベス(Macbeth)

コンパクトでありながらその緊張感は弱まることがなく、言葉の主旋律的な使い方がすごく音楽性に溢れているこの作品は優れた詩であると同時に優れた戯曲でもある。ディケンズ同様に、シェイクスピアの天才性を測る一つの尺度は脇役たちへの寛大さにある。暗殺者1は、心に深く刻まれるような口調でこう語る「西の空では昼の名残りが縦となっておぼろに光っている(松岡和子訳)」と。舞台での歴史は紆余曲折を経たものの、過去半世紀の間にトレヴァー・ナン、グレゴリー・ドーラン、ルパート・グールド、そしてケネス・ブラナーらによる考えられた演出によってこの戯曲は新たな命を吹き込まれ、観客を物語の共犯者へと引き込むようになった。

4: 夏の夜の夢(A Midsummer Night’s Dream)

「私がこれまでの人生で見た中で最も退屈なばかばかしい戯曲だ」とサミュエル・ピープス(17世紀英国の作家で政治家)は語ったが、この作品は数世紀にわたり観客を魅了し続け、オペラやバレエ、映画作品にインスピレーションを与え、無限のバリエーションで上演され続けている。例えば、1900年代の役者で座長であったビアボーム・ツリーは観客に生きたウサギやブルーベルの茂みを出現させている。1970年、ピーター・ブルックは白い立方体を舞台に据え、そこで役者たちがサーカス的身体表現を披露した。そして2007年のティム・サプルは7つの南アジア言語を駆使した革新的な演出を手掛けた。その魔法は今もなお、色褪せることなく続いている。

3: ハムレット(Hamlet)

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2: 十二夜(Twelfth Night)

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学者マイケル・ドブソンは、シェイクスピアにおいて「喜劇と悲劇という区分は、現実の世界と同様に、同時に起こり得るものである」と記している。この卓越した戯曲は、陽気と憂鬱、喜びと残酷さ、現実と夢が織り交ぜられていることで、そのことを裏付けている。マルヴォーリオをからかう場面は、その瞬間は滑稽だが、その結果は残酷である。クライマックスとなる夫婦の組み合わせでは、性的混乱に満ちた未来を暗示しており、この最も叙情的な戯曲は、人間の生と演劇の儚さを歌った歌で幕を閉じる。ピーター・ホールやジョン・バートンの演出を含め、数多くの忘れがたい舞台が生み出されてきたが、サム・メンデスが同様の悲喜劇であるチェーホフの「ワーニャ伯父さん」を同じキャストで並行上演した際の舞台では、その真髄を捉えていた。

1: ヘンリー四世 一部・二部(Henry IV Parts One and Two)

「シェイクスピアの偉業の中における二大傑作」—と70年前に英国人劇作家で演劇批評家のケネス・タイナンが書いたが私も心から同感だ。第一に、この二作は実に多くのものを提供している。父と息子をめぐる私的なドラマ、分裂した王国の公的な肖像、そしてロンドンの酒場からグロスターシャーの果樹園に至るまで広がる、この国の多様性の感覚などだ。シェイクスピアの作品によくあるように、ここにも豊かな両義性が存在する。ハルは、計算高く冷酷な政治家として見られることもあれば、自ら進んで王としての修業に励む男として見られることもある。王自身も同様に、容赦なく反乱を煽る家長であると同時に、宗教的な赦しを渇望する罪悪感に苛まれた不眠症の男でもある。

上位5位に関してはビリントン氏の作品についてのコメント付きで紹介した。

「ハムレット」や「マクベス」といった日本での人気作が上位に入る中、日本ではあまり上演の機会がない歴史劇が1位に輝いているのが面白い。

また補足としてロンドンで上演された日本のプロダクションの記録を記載している。