
日曜日の夜、多くの人々がテレビやネット画面の前に陣取る「VIVANT」現象を牽引している俳優堺雅人。そんな堺の17年ぶりの舞台出演ということでこの秋大注目の舞台「スリーゴースト」がいよいよ10月7日に渋谷PARCO劇場で幕を開ける。
「タイトルの『スリーゴースト』には、「どんな人間にも三人のゴーストがいる」という意味を込めました。一人目はその人物に警告を与える者、二人目はその人物を慰める者、三人目は「そろそろ終わる時ですよ」と伝える者です」と語るのは劇作家で今回の世界初演作品の仕掛け人の一人、現代英国演劇の旗手サイモン・スティーヴンス(Simon Stephens)。
そしてこのスティーヴンスの新作戯曲の演出を手がけるのが彼の盟友でこれまで何度もタッグを組んできてスティーヴンス戯曲を知り尽くす英国人演出家、ショーン・ホームズ(Sean Holmes)だ。
2月27日に行われた制作発表会では「この作品は、ロンドンでも東京でもない「その間のどこか」……我々の現実とは少し違う世界に漂っているような物語です。(略)…ダークでありながら、ユーモアと美しさに満ちた他にはないストーリーを、皆さんと共に描き出せれば幸いです」と創作の意気込みを語ってくれた。

左ー>右 ショーン・ホームズ(演出)、堺雅人(主演)、サイモン・スティーヴンス(作)
そもそもこの日本発となる日英合作プロジェクトが動き出したのが6年前。2020年にスティーヴンスとホームズ、日本人俳優たちによるゲーテの「ファウスト」に着想を得た現代に生きる悪魔と契約した男(森田剛)の転落を描いた舞台「FORTUNE」の創作時にまで遡る。
当時、PARCO劇場英作発表会と制作協力のゴーチ・ブラザーズ側が「いつの日か日本の演劇ラバーズのため新作を書き下ろして欲しい」とスティーヴンスに依頼したところ、彼の瞳が輝いたのを機に、その後日本と英国で代わる代わるワークショップやミーティングを重ね、コツコツと積み上げてきたのが、スティーヴンスが言うところの“死者たちの話”「スリーゴースト」となる。
スティーヴンスは新作について「何よりもまず、東京についての作品を書きたいと強く願っていました」と話す。
「この作品には、東京という街への私の愛情が込められています。執筆にあたって、多くの友人や仕事仲間に案内してもらいながら東京の街をたくさん歩きました。案内してくれた方達にとって大切な場所を訪ね、その目を通して街を見ることで、私は東京をこれまで以上に身近に感じることができました。
「これは愛と結婚が持つ脆さと可能性についての物語です。同時に、デジタル革命の時代において、人間が新しいテクノロジーのもたらす恐れと可能性の中をどのように生き抜いていくのかを見つめる社会的な作品でもあります。」
一方でホームズは「この作品は、罪悪感、羞恥、そして愛というテーマを、独自の視点から力強く掘り下げる戯曲です。そして幻想性と豊かな喚起力を備えた舞台表現が求められる戯曲です」と解説を加える。
<あらすじ>
一人目は「警告」、二人目は「試練」、そして三人目は……
夢の記録、記憶の再生—“リープマインド“
忘れられない感情が現実と交錯する。
―――過去は終わらない。
人が見る夢をデジタル化し、再現する……夢のようなガジェット「リープマインド」。
その宣伝契約を勝ち取るため、取締役会でのプレゼンテーションに臨むジョー(堺雅人)。
彼はリープマインドがもたらす新たな可能性に、ただならぬ情熱を抱いていた。
妻のハナ(倉科カナ)との生活も顧みず、他社との熾烈な競争に身を削る日々。
ハナの姉・ミカ(伊勢佳世)に癒しを求めるが、二人の関係に取り返しのつかない亀裂が走る。
ただならぬ様子のミカを心配したハナは、ジョーに疑問をぶつけるが、不安を解消するような返事は得られない……。事情を察したミカとハナの父・ケン(段田安則)は、ジョーからハナを引き離そうとする。
一方、ジョーの母・マリ(高畑淳子)は、若くして自死した姉・ニコを助けられず自分を責め続けるジョーに、複雑な気持ちを拭い去れずにいた……。
ミカが姿を消したあと、念願の案件を勝ち取ったジョーだが、成功は空虚なものだった。
そして友人の眼科医・ユーゴ(迫田孝也)を訪ねたジョーに、思いがけない診断が下される。
孤独の内にも新たな助手のサラ(sara)を迎え、仕事を続けるジョー。だが、サラはハナの教え子ダン(小日向星一)とともに、ある疑念を抱いてジョーに近づいたのだった――。
もともと多くの演劇人を輩出している早稲田大学で劇団「東京オレンジ」の旗揚げに参加し、演劇に明け暮れる日々を過ごした堺は制作発表会で、
「事前に行われたワークショップを見学させていただきました。見学だけのつもりだったのですが、少しだけ舞台にも立たせていただき、すばらしい俳優の皆さんやサイモン(スティーヴンス)さん、ショーン(ホームズ)さんと一緒に、いろんな実験を重ねることができました。本当に贅沢な時間でした。(略)…今は、誰も見たことのない、楽しい遊びに混ぜていただく子供のような気持ちでいます」と、久しぶりの舞台とは言え不安よりも期待の方ががぜんまさっていると語り、開幕へ向けて心の高鳴りを一層引き上げてくれた。
奇しくも「VIVANT」でも人格の違う3人の男を見事に演じ分けている堺雅人が今作の3人のゴーストたちにはどのように相対するのか。過去の記憶、3人のゴーストたちの言葉からジョーは真実の愛に辿り着くことが出来るのか。目まぐるしく移り変わるデジタル時代を生きる私たちの心を呼び起こす心理ミステリー劇の幕が上がる。
スリーゴースト
東京:10月6日(火)=プレビュー公演〜27日(火)PARCO劇場
岡山:11月6日(金)〜8日(日) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ中劇場
大阪:11月12日(木)〜23日(月・祝)SkyシアターMBS
愛知:11月27日(金)〜29日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
宮崎:12月3日(木)〜6日(日) メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)・演劇ホール
福岡:12月10日(木)〜13日(日) J:C O M北九州芸術劇場 大ホール
詳細:https://stage.parco.jp/program/threeghosts/
