2026年8月9日、彩の国埼玉芸術劇場大稽古場で「ダンス・リダイレクション2026夏」のショーイング(発表会)が行われた。jstages.comではその様子をレポートする。
2024年から芸術監督近藤良平の指揮のもと始まったダンス・リダイレクションでは若いクリエイターを育成する目的で国内外の振付家・ダンサーたちによる「集中セッション」、海外招聘公演と連動した「ワークショップ」、著名な振付家を招いての対話プログラム「インサイト」を展開。さらに数年かけて若手アーティストを支援していく「スタジオフェロー」制度を設けている。
これまで8度のプログラムを行なってきたダンス・リダイレクション。今回は世界トップのダンスカンパニー「ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)」に11年間在籍。2020年にカウンターテクニックティーチャー資格を日本人で初めて取得したオランダ在住のダンサー、振付家の湯浅永麻氏を講師に招いて「創作の現場から|クリエイション・ワークショップ」と題した6日間の夏季集中セッションを行なった。
ショーイングでは個々のバックグラウンド、ダンス経験もさまざまな参加者たちが4つのグループに分かれて創作した趣の異なる小作品『Mommy, Close the Door!』(振付・ビジュアル・インスタレーション・サウンドデザイン:Liel Fibak 出演:杉浦ゆら、平山温子)、『砂で道ができる』(原案:内田颯太 共同創作・出演:浅沼圭、志村智晴、田村映水子、中村美空)、『Re』(振付:神渡茉由 出演:大井かのこ、柴田有希)、『光の庭 -名のないものにふれて-』(アドバイザー:今泉かなこ 振付・出演:石山天空、今泉かなこ、土屋葵、半田杏奈)が次々と披露された。

『Mommy, Close the Door!』

『砂で道ができる』

『Re』

『光の庭 -名のないものにふれて-』
そしてパフォーマンス後のトークが行われ、そこでは湯浅氏からカウンターテクニックとは何か、今日のダンス界の傾向などが話され、次いで参加者たちから作品の意図、創作の工夫などが語られた。参加者の中にはダンス経験がない上で振付を担った人や異業種・フラワーデザイナーでやはり振付をした人などもおり、彼らの発想の源、作品が目指したものなどを聞きながらうなづく湯浅氏の姿がそこにあった。

ダンサー・振付家 湯浅永麻
湯浅:「時代によってコンテンポラリーダンスの幅がどんどん広がっています。例えばダンスの基礎がない人がコンテンポラリーダンス作品を作ったりしています。それによってダンサーも身体のキャパシティ、幅を広げなければいけないのに、その毎年新しくなるもののフォローアップ、更新がされていないのが現状だとカウンターテクニックの発案者アヌーク・ファン・ダイクが言っています。
現代の更新されたものに対応できるメンタリティとボディを作ることをダンサーたちと一緒に考えながら作りあげたメソッドがカウンターテクニックになります。
緊張するとこわばって身体が動かなくなりますが、いかに自由な身体とメンタリティでクリエーションに臨めるかということを考えていくのです。なので、このプロジェクトの6日間もウォームアップとして毎朝1時間〜1時間半ぐらいカウンターテクニックを続けてきました。
この企画のではその主旨をクリエイター育成と銘打っていますが、私はクリエーションというのは自由であるべきだと思っているので、私自身クリエーションに関して“教える”ということを出来ない、それをするのは私ではないと思っています。なので、私がこれまでヨーロッパで経験したこと、見てきたことなどをビデオを観たりしながら、それぞれの創作に関してレクチャーをしました。例えば、フィジカル強度がとても高いベルギーのダンスシアターカンパニー、ピーピング・トムの作品はどのようにして作られるのか、オペラや演劇など早くから越境して作品を作っているマッツ・エック、そして演劇人の岡田利規との作品作りでは何が起きていたのかなどについてレクチャーをしました。
ダンス作品を作る時にダンス経験が絶対必要かというとそうでもなくて、経験がないからこそ予定調和ではない作品が生まれることがあります。今回は作品を作って発表したいという人に自主的に手を上げてもらい、参加者たちで4つのグループを作ってもらいました。」
今後も“新しい舞踊表現を切り拓く思考力・創造性を備えたクリエイターを輩出”すべく継続していく彩の国さいたま芸術劇場のダンス・リダイレクション企画。新たな、違った視点から若いアーティストを刺激し、クリエーションの場を与えていくこの試みに注目だ。劇場では随時「ダンス・リダイレクション登録アーティスト」を募集している。
