4月1日、池袋西口前の東京芸術劇場ロワー広場で「東京芸術劇場 新芸術監督 舞台芸術部門 岡田利規 音楽部門 山田和樹 就任記者発表会」が行われた。一般に開かれた広場での会見ということで東京芸術劇場館内を行き来する人たちも立ち止まって耳をかたむける中、同日から舞台芸術部門の芸術監督に就任した岡田利規が就任にあたっての考え、今後目指すところについて語った。
冒頭、「今のこの現実に対してこのままでいいとは全然思っていません」と厳しい言葉で切り出した岡田新芸術監督。
「東京芸術劇場の芸術監督として芸術の力を疑ってかかることを基本姿勢としてこの仕事に臨みたいと思っています。それは芸術の力を信じているからです。」と初心表明を続けた。

岡田利規芸術監督
「チャレンジしたいことはこれから企画し、実践していくプロジェクトを通して舞台芸術がこの社会、そして現実の中に届いていく仕方に変容を引き起こすことです。このコンセプトに基づいて公演事業を制作し、社会共生事業を、人材育成事業を行なっていきます。“芸術がこの現実へ向けての応答であり、返答である”ということが明らかであるということを明言できるようにしていきたいです。
社会や地域の問題への応答として、たとえばワークショップ形式のプロジェクトを東京芸術劇場の取り組みの大きな一つであるとはっきりと打ち出していきたい。問題は現実に対して舞台芸術という方向で応答していくというコンセプトを我々がどれだけ実践できるか、どれだけくっきりと輪郭を持ったものとして行っていけるのか、この課題を私自身に与えたいと思っています。
舞台芸術は今でも一定程度機能しているとは思いますが、東京芸術劇場は現実への応答として、その実践を通して舞台芸術が現状で手にしている文脈を変容させたい、広げたいのです。そのためには劇場で舞台芸術を体験する機会をなるべく疎外しないということに我々は積極的に取り組みたいと思っています。その意味で、アクセシビリティを当然のこととして考えます。また、上演作品についてどのようなテーマを扱うのか、さらにそのクオリティも重要になってきます。クオリティに関して言えば、それは舞台上で発せられる言葉、演技、そこにあるフィクションが観る人の想像力を駆動させるものかどうかということになります。アクセシビリティ、テーマ、クオリティ、そのどれもが舞台芸術の実践を現実への応答というコンセプトのもとに行う実態に、自分に関係のあるものだと感じてくれる人たちの裾野を広げるためにはどうしていけば良いのかに関わってきます。
また、劇場の芸術監督であるということはさまざまな人たちと一緒に仕事をするということです。芸術監督が最も密に仕事をするのは、なんといっても劇場の職員です。彼らと一緒に現実への応答を成し遂げるため、より良いコミュニケーションを図りたいと思っています。そこで、もう一つ大切なこととしてあるのが職員の労働環境についてですが、現状、彼らは過度な仕事量を抱え過酷な状況にあり、このままで良いとは思っていません。
東京芸術劇場がどのように舞台芸術に携わる芸術家たち、俳優、ダンサー、舞台美術、照明、衣裳、音響などのデザイナー、技術者、演出家、振付家、劇作家らと協働していくのか。舞台芸術という手段を用いて、感性による経験として、芸術だけが作用させることができる技でもって現実に応答してみせる芸術家たちの仕事を、彼らと私たちの協働の成果を、社会において文脈づけていけるのかという課題を自分自身に課したいと思っています。
そしてもう一つ、劇場内に新たに掲げられた旗にある「はみだすハーモニー」の言葉通りに、積極的に音楽部門とのコラボレーションを進めていきたいと思っています。舞台芸術と音楽とでは文化や考え方においてさまざまな違いがあり、ほとんど異文化コミュニケーションであると思います。だからこそ、はみだし、進めていく予定です。
最後に、私の一番の心配の種は私自身です。これまで “これは演劇なのか、これは演劇ではない”と言われ続けてきた演劇の作り手です。そんな私が芸術監督ということで心配されている方も少なからずいると思うのです。ですが、そんな私だからできることがあるとすれば舞台芸術と社会の文脈に少しばかりでも変容を起こすことだと考えています。与えられた時間の中で粘り強くベストを尽くしたいと思います」と意気込みを語り、締めくくった。

岡田利規芸術監督、鈴木順子副館長 とスクリーン内(モナコからオンライン参加)は音楽部門芸術監督山田和樹
東京芸術劇場 2026年ラインナップ
2026年4月29日(水・祝)、5月2(土)-5(火・祝)
「TACT Festival 2026 タクト・フェスティバル」
落語・音楽・大道芸・サーカスといったこどもからおとなまで誰もが楽しめるフェスティバル
2026年5月10日(日)、24日(日)
「らくだ」
ジャン・レノのソロパフォーマンス
作:ジャン・レノ
演出:ラディスラス・ショラー
出演:ジャン・レノ
ピアノ:パブロ・ランティ
2026年7月15日(水)〜26日(日)
「NORA」
イプセンの代表作を現代に問い直して上演
原作:ヘンリック・イプセン
演出:ティモフェイ・クリャービン
出演:黒木華 勝地涼 瀧内公美 鈴木浩介 他
2026年8月7日(金)〜23日(日)
「映画を撮りたいゾンビの演劇」
岡田利規の新作(ハノーファー州立劇場のレパートリー作品として5月に初演を迎える)
作・演出:岡田利規
出演:東宮綾音 / 百瀬葉 / 島田桃依 / 石川朝日 / 福原冠
2026年9月21日(月・祝)〜10月4日(日)
「リア王」
シェイクスピア古典作品を現代に問い直し、超高齢化社会の現代日本が抱える切実な諸問題を映し出す
原作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:森新太郎
出演:内野聖陽、前田公輝、井之脇海、清水くるみ、川上友里、内田慈、大山真志、永島敬三、和田正人、杉本哲太、山路和弘 他
2026年10月9日(金)~11月3日(火・祝)
舞台芸術祭「秋の隕石 2026 東京」
2026年10月
岡田利規・山田和樹 コラボレーション企画
考案中で詳細は未定
2027年1月12日(火)~31日(日)
桐野夏生原作×ジョン・マルコヴィッチ演出・脚本「リアルワールド」
2027年2月
若手セレクション「ビー・ドラ(Be Drastic)」
2027年2月26日(金)~28日(日)
小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク「アンサンブル:ダンス作品第4番」
