世田谷パブリックシアター2026年度ラインアップ発表会

3月31日に世田谷パブリックシアター2026年度のラインアップ発表会が行われた。

会見冒頭、2026年度主催事業のテーマは「わたしは、この世界でどう営むか」であると語った白井晃芸術監督。

新たな価値観や生活様式を日々模索しているわたしたちが、お金のあり方、家族のあり方、働き方のあり方、所有することのあり方など、自身の営みそのものを見つめ直すことが求められていると考え、それらの変化に対してさまざまな視点から今の時代を映しだす作品を取り上げていく年にしたいと新シーズンの抱負を述べた。

白井晃芸術監督

「劇場はあらゆる人々が集まり対話を生む場所であり、その劇場が多くの人々の営みに新しい視点をもたらすことを願っている」と語る芸術監督はその後、2026年度のラインアップの発表へ。この日登壇したアーティストたちもそれぞれに作品についての抱負を語ってくれた。

2026年4月25日(土)〜5月6日(水・休)

「フリーステージ2026」

シアタートラム

バレエ、音楽、ダンスといった文化活動を行っている世田谷区民団体の方々と劇場のスタッフが一緒に創り上げる舞台。今年で29回目を迎える。

2026年6月8日(月)〜7月5日(日)

「レディエント・バーミン Radiant Vermin」

撮影:設楽光徳

シアタートラム

作:フィリップ・リドリー

翻訳:小宮山智津子

演出:白井晃

出演:清原果耶、井之脇海、池津祥子

演出の白井が愛してやまない英国人作家フィリップ・リドリーの戯曲を10年ぶりに再演する。2016年の初演同様にシアタートラムでの上演となる。家を探しているカップルが不思議な出来事に巻き込まれていく、笑っているうちに怖くなるブラックコメディー。

****せたがやアートファーム2026****

アートファームとはさまざまな芸術が生まれ、育ち、花が咲き実になる場所。子供から大人まで垣根なく楽しめる演劇、ダンス、音楽、サーカス、落語にファッション、現代美術などのパフォーマンスやワークショップを開催する。

2026年7月21日(火)〜23日(木)

©Thibault Carron

シアタートラム

カナダ・ケベック出身のアーティストによる2人組サーカスユニット。男女間の“支える人”“支えられる人”といった垣根を取り去りながら一緒にバランスを見つけていく。2025年には若手サーカスアーティストの登竜門であるフランスの国際フェスティバルで特別賞・オーディエンス賞・パリ市賞をトリプル受賞した、今最も注目されているサーカスカンパニーの一つ。

©Thibault Carron

2026年7月22日(水)〜29日(水)

©Pedro Arnay

生活工房 ワークショップルーム

スペインのダンスカンパニー、ラルンベ・ダンサによるダンス作品。仮想現実空間の中でのダンス舞台で、専用ゴーグルを着用してのVRとプロジェクションマッピングと生身のダンサーによるリアルなダンスの両方を体験することとなる。

©Pedro Arnay

2026年7月下旬

撮影:山添雄彦

落語家 春風亭一之輔

せたがやイーグレットホール(世田谷区民会館)

春風亭一之輔による、夏の恒例企画。子供も大人も楽しめる人気寄席公演。

2026年7月下旬

©Daisuke

宮川彬良

白井晃

シアタートラム

音楽事業部「せたおん」スペシャル・プロデューサーで演劇関連の音楽も多く手がけている宮川彬良(アキラ)と劇場部門の芸術監督である白井晃(アキラ)が音楽と演劇の関わりについて語るスペシャルステージ。

撮影:高田洋三

「せーかつぷれこーぼー」の様子

*生活工房「せーかつぷれぷれこーぼー」 

デザイナーやアーティストを招いて造形活動体験

*小学生・中学生・高校生のためのエンゲキワークショップの開催

*世田谷パブリックシアター インターンシップ

「小中高エンゲキワークショップ」

****あたらしい国際交流プログラム*****

世田谷パブリックシアターではこれまで国際共同制作や海外公演の招聘を積極的に行ってきたが、その上でさらに踏み込んだ交流が出来ないかということで、海外のアーティスト、俳優と一緒に一から議論をしながら創作を積み上げていくという交流プログラムを立ち上げた。

文化庁の「文化施設による高付加価値化機能強化支援事業」に採択されたプログラムということもあり、出来るだけ若いアーティストの方々に活動の場を提供し、今後国際発信をしていくような才能を育てていくことを目的としている、とのこと。

2026年8月

(c) Nobuko Tanaka

L->R 鈴木アツト、生田みゆき

シアタートラム

原作:上田秋成

脚本:鈴木アツト

演出:生田みゆき

<鈴木アツト>

©田中亜紀

溝口健二監督の同名映画で広く知られている「雨月物語」の原作を元に現代版として翻案を、という依頼を受けたのがこの企画の出発点でした。「雨月物語」は江戸時代の作家吉田秋成が日本や中国に伝わる古典をもとに書いた怪奇小説短編9話からなるアンソロジーです。その中から「浅茅が宿(あさぢがやど)」「夢応の鯉魚(むおうのりぎよ)」「青頭巾(あをづきん)」「菊花の約(きつかのちぎり)」の4編を選んで現代版に構成、今作では「浅茅が宿(あさぢがやど)」を物語の主軸に置きました。

私の現代版では勝四郎という男性モデルと人魚をモチーフに絵を描いている女性の日本画家宮木が主人公となります。演出の生田みゆきさんの舞台を拝見して、演出の作家性が爆発しているような印象があり、戯曲の枠を保ちつつその戯曲を大きく拡張するような演出家で、俳優のポテンシャルをどこまでも引き上がるようなモティベーターでもあると思っています。

<生田みゆき>

©田中亜紀

鈴木さんとの協働も楽しみですが、この作品が「あたらしい国際交流プログラム」として創作されるというのが、もう一つ大事にしたいと思っていることです。去年こちらのシアタートラムで上演しました「不可能の限りにおいて」という作品も「あたらしい国際交流プログラム」の一つでした。オーディションを経た14名の俳優と作品に取り組んだのですが、本当に魅力的な30歳前後の俳優たちと出会わせていただき、彼らと共に今世界で起きていくことについてじっくり考えながら稽古をした日々は宝物のようなものでした。そのプログラムの第三弾として、前回のスタッフやキャストに加えて、さらに新しい方々と一緒に書き下ろしの作品に挑めるということで、新たな挑戦へと進めることを楽しみにしています。すぐに世界のどこでも繋がれる時代において、今語られるべき人間の深層心理や私たちの時代が抱えている問題を古典を通してあらためて考えることが出来ればと思っています。

2026年9月〜10月

「Yerma イェルマ」キャスト写真

咲妃みゆ、渡邊圭祐、小林亮太、渡辺いっけい

シアタートラム

作:オノマリコ

構成・演出:稲葉賀恵

スペインの詩人・作家のフェデリコ・ガルシーア・ロルカの傑作「イェルマ」を新たにオノマリコが劇作し、演出を稲葉賀恵が担う。

<稲葉賀恵>

©田中亜紀

最初に読んだ時、自分がこの主人公に共感出来ませんでした。それはなぜなのかと思った時に、今回再構築する主眼が見えてきました。そこで、イェルマという女性を見た時に自分がなぜか罪悪感を感じたというところからこの翻案を始めてみようと決めました。イェルマは家父長性が当たり前の当時の社会で子供を産めないことにコンプレックスを抱いている女性です。私自身は子供を産んでいないのですが、そのことになぜか罪悪感を持っているということに気づいて、戯曲を読んで自分を惨めに思ってしまう。。。そんな自分はどこから来るのかというところから視点を広げていきました。そのような女性性、男性性ということに対して考えることは今の日本に広く蔓延っていることだと感じます。また、宝塚歌劇団出身の咲妃みゆさんがイェルマを演じるということで、音楽劇のような要素も取り入れて女性が輝く作品にしたいと考えています。

<オノマリコ>

©田中亜紀

ロルカの「イェルマ」を現代の日本の話として書いています。イェルマはとても子供が欲しいと思っている女性なのですが、昔はそれを女性の根本的な気持ちとして捉えられていたと思います。とは言え、今日の日本ではそれも社会からの要請による欲望になっているのではないかと考え、そこに主眼において書いているところです。長らく社会制度として培ってきた考えというのは心の深いところで根ざしているので簡単には変えられないのだということを描ければと思っています。ラストで原作とは違った選択をするイェルマ、というところに注目していただければと思います。

2026年10月

©佐々木利江

キャロットタワー周辺

秋恒例の大道芸フェスティバル。

©Tobias Fischer

せたがやイーグレットホール(世田谷区民会館)

スウェーデンを拠点に活動するザ・ヴェッセル・プロダクションズによるコンテンポラリーサーカスの舞台。

2026年12月

****シアタートラム・ネクストジェネレーション vol.18 —演劇—

(c) Nobuko Tanaka

大月リコ、草田陸

作:草田陸

演出:大月リコ

次世代を担うアーティストの発掘と育成を目的とした「シアタートラム・ネクストジェネレーション」。2022年より年ごとに「演劇」と「フィジカル」を交互に上演する形態をとっている。今年は演劇で約30団体の応募の中から選ばれたyoowaの「GARDEN」を上演する。

<大月リコ>

©田中亜紀

yoowaは2021年に旗揚げしたカンパニーで、今回の「GARDEN」が4作品目となる若い団体です。「GARDEN」は高台に住む、母を亡くした男ばかりの一家の庭が舞台となる音楽劇です。yoowaはミュージカル、音楽劇の可能性を探求しているカンパニーで、今回も抽象性を折り込みながら、いわゆる大きな物語に飲み込まれすぎずに人間というものを深く繊細に描きたいと思っています。価値観が多様化している現代において形骸化、記号化していった言葉、例えばそれは“男”という言葉であると思っているのですが、その言葉の向かう先は何なのかというところから作品を構想しました。

<草田陸>

©田中亜紀

これまで書いたものは物語を回していく役が毎回女性だったのですが、今回は男性を主人公にして話を書いてみました。男性ばかりということで、女性と男性の間では言葉を発すること、会話の起こり方に違いはあるのかということを考えながら作劇しました。人生において発する単語量は女性の方がずっと多いのではないかという仮説をたて、そうなると男は黙っている間は何をしているのか、と。男と女というものを両者の関係で描くのではなく、男性(女性)は男性(女性)の何が男性(女性)たるのかということを主眼に置くために、男三兄弟と父親だけの男一家、プラス女1人(次男の婚約者で庭師)という極端な構図にしようと思いました。男ばかりの場ではいったい何を喋るのか、そこに1人女性が入ったら、庭師という他者が入ったらどう変わるのか。

今は結婚はそれぞれのものであり類型的なものではないと思いますが、その中で家と家が繋がるということと家と個人が繋がるということについても問いたいと思いました。

2027年2月

©Yang Tzu-Yi

闖劇場/Dashing Theater(チュアン劇場 /ダッシングシアター)

シアタートラム

振付・演出・音楽監督:黃懷德(ホアン・ホワイドー)

台湾のコンテンポラリーダンス界を牽引する注目のダンサー・振付家の黃懷德(ホアン・ホワイドー)が主宰する闖劇場/Dashing Theater(チュアン劇場 _/ダッシングシアター)がシアタートラムに登場。

©PAUL CHAO

2027年2月~3月

(c) Nobuko Tanaka

白井晃、鈴木アツト

シアタートラム

原作:ベルトルト・ブレヒト

原作翻訳:酒寄進一

脚本:鈴木アツト

演出:白井晃

2024年度の「セツアンの善人(演出:白井晃)」2025年度の「コーカサスの白墨の輪(演出:瀬戸山美咲)」に続いて今年度もブレヒトの作品「聖ヨハンナ」を上演。脚本は「雨月物語」に次いで鈴木アツトが担う。

<白井晃>

©田中亜紀

20世紀初頭の食肉工場を舞台に、マーケットを支配する精肉王の社長とそこで働く従業員たちの労働環境の改善を求めて抗議をする団体のリーダーであるヨハンナの話なのですが、その対立に焦点を合わせて従来は30名近く登場する話を6人の役者で上演します。現在の様々な食品に関する問題、食品業界の問題やフードロス、さらには労使問題を絡めていけたらと思っています。個人的に古典の現代化にとても興味があり、今作でもそれを追求していきたいです。

<鈴木アツト>

©田中亜紀

シェイクスピアやブレヒトに影響を受けた作家なので、オファーをいただいた時は嬉しかったです。基本的にこの戯曲は資本家と労働者、その間を繋ぐ制度と言うか運動家の話なのですが、登場人物を6人にしぼることで立場の違う両方をかわるがわる登場させ、労働市場が上にも下にもなるということを打ち出せるのではと思っています。ブレヒトの原作は1920年代のアメリカ、シカゴが舞台となっているのですが、それを変えた方が良いのかを演出家と話し合っているところです。また今作は精肉王モーラーと彼を正そうとするヨハンナという2人のリーダーの話であり、彼らを取り巻く群衆の話でもあります。僕らが世の中を良くしていく時にリーダーと群衆はどのように約束を取り決めていくのかという話でもあると思っています。

2027年3月

撮影Maki Suzuki

シアタートラム

地域の皆さん参加いただいてワークショップのプロセスを通じ、台本のないところから演劇を作りシアタートラムで作品発表を行う世田谷パブリックシアター恒例の学芸事業。

その他詳細、最新情報は

世田谷パブリックシアターウェブサイトで

https://setagaya-pt.jp/