SPACの代表作「王女メデイア」がロンドンで絶賛される

photo : Takuma Uchida

★★★★★BROADWAYWORLD

この作品全てにおいて見られる多くの奇抜なアイディアについて言えることはそれらがみな卓越した効果を発揮しているということ。この「メデイア」ではアテネの厳しい父権制、分裂精神、栄光への極度の欲求などといった古代の起源をうまく取り込みながら、ハイリスクな恐怖と残虐行為をそこに注ぎ込んでいる。その結果、心地悪さを感じながらもそれと直面することを強いられ、そしてずっと忘れることができない、そんな舞台となっている。

Photo courtesy of SPAC

コロネット劇場でのゲネプロの様子

★★★★The Stage

パワフルで豊かな象徴性を有している舞台

メデイア神話をスタイリッシュな日本語で全く新たなものに昇華した作品。俳優たちにより完全に心奪われるほどの激しさで演じられる。

古代ギリシャ悲劇の直接的な感情の熱烈さと伝統的な日本形式の絶対的な正確さをぶつけることで、定評のある静岡県舞台芸術センター(SPAC)芸術総監督である宮城聰はエウリピデスの古典悲劇をワクワクする作品へと再構築し、見事に仕上げた。

… 劇が進行する中で、時に展開が遅いと感じるかもしれないが、それらは徐々に息が詰まるような緊張感を累積させていき、ついには驚くべき急展開を引き起こし、劇的なセンスでもって破裂、集結をむかえる。

父権性、帝国主義、そして性差別的暴力といったテーマを探求するため、宮城は洗練された構成手法を効果的に展開し、明治時代の日本を今作の舞台として設定している。

役者たちは見事な集中力でもって、正確な動きと誇張されたドラマティックな動作を駆使し、あらゆる辛く悲しい感情の痛みを伝えていた。

劇団員たちによってライブ演奏される棚川寛子の音楽は、伝統的な楽器を用い催眠的な効果をもたらし、はっきりと鳴り響く弦楽演奏、鋭い鐘の音はメデイアが自身の良心と葛藤するシーンにあわせ、張り詰めた空気を表現していた。

Photo courtesy of SPAC

コロネット劇場でのゲネプロの様子

★★★★★NORTH WEST END UK

かつてこれまでに観たことのないメデイアだ。演出の宮城聰は古代ギリシャ悲劇の傑作に少し調整を施し、フレッシュな色付けをし、眩い光を放つ宝石を作り上げた。これほどまでストーリーを的確に伝えている作品は他にないだろう。

それぞれの役は2人の役者によって演じられている—台詞を話す男性の“スピーカー”とそれを動きで演じる女性の“ムーバー”だ。

最後の5分間に変化は起きる。まず、スクリーンが巻き上がり、全員女性のバンドが現れ楽器を演奏する様子が露わになる。激しいパーカッション音楽(棚川寛子の音楽は独特で、音楽がこの作品の一つの魅力となっている)が鳴り響く中、女性たちがステージを支配、装飾を脱ぎ捨てた彼女らは物語を彼女らの手に奪還。これは自主性を取り戻したということを意味する。音楽同様に高橋佳代・Descheneの衣装が極めて重要な役割を果たし、支配する側とされる側の境界線を描き、抑圧と反乱の両方の象徴となっている。

photo : Takuma Uchida

★★★★★Everything Theatre

エウリピデスの古典の息をのむように見事な再解釈。日本の伝統演劇と実験演劇を混ぜ合わせ、メデイアの怒りを改革と復讐によるものとして組み立ている。魅力に溢れ、衝撃的で象徴的、随所でスペクタクルなシーンもあり、忘れることの出来ない観劇体験となった。

この激しい作品の後半1/4の部分は殊更に目が離せないものとなっている。メデイアと彼女の息子による身体表現による物語の展開は実に悲惨で残酷であり、その一方での看護婦/死者たちの舞台外での死の再現は、そこにさらなる優れた効果を足している。女性のキャラクターたちが象徴的に支配を強化してパワフルな結末を示す中で、宮城のメデイアは強く確かに記憶に残る演劇体験として忘れ難いものとなる。

Photo courtesy of SPAC

コロネット劇場でのロンドン公演カーテンコール