東京、北九州、大阪と国内76ステージを終えたあと海を越え、ロンドン、サドラーズ・ウェルズ劇場で3日間4公演の限定上演で締めくくった「正三角関係=英題: Love in Action」。
劇作家・演出家・俳優として今作に関わった野田秀樹が11月12日に池袋、自由学園で日本のプレス向けにロンドン公演の報告会を行った。
ロシアの文豪ドストエフスキーの名著「カラマーゾフの兄弟」をモチーフにした今作。日本の花火師家族“唐松族の兄弟”の長男富太郎(松本潤)にかけられた父殺し疑惑の裁判が進むうちに、彼らの背後では未曾有の核兵器使用の計画が着々と進んでいたという急展開をみせ、原爆投下の悲劇でフィナーレを迎える。
2008年に「源氏物語」をベースとした「The Diver」をロンドンで上演した際、そのもととなった文学を知る人はわずかで日本の文化や歴史がいかに興味を持たれていないのかを如実に感じたと振り返った野田。日本では「ロミオとジュリエット」が恋愛話であるということは多くの人が知るところで、だからこそ海外上演でその文化的な不平等に一石を投じていきたいのだと話す。
さらに、今は戦争が遠くなり過ぎた世代が増え、今後若い世代の作家たちがどれほど戦争を扱った戯曲を書いていくかというところに疑問もあり、実際に知らないまでも戦争があったということを体に感じている世代の作家として戦争、原爆についての作品を書いている、と自身の作家としての役割を分析した。
今回は終演後に「欧米人のクリエイターたちが決して創ることのできないものを創ってくれた。何か目を覚ませと、頬っぺたでも引っ叩かれたみたいな気分だ」という現地の観客からの感想を聞き、”届いた”と感じた、と話す顔には笑みがこぼれる。
新作を持ってロンドン公演を行うのは今回が初めて。とは言え、これまで積み上げてきた海外上演経験を活かして、上演日から逆算して春頃から着々と準備をしてきたそうで、海外公演に必須の字幕に関しては字幕翻訳者2人、オペレーター1人という体制で望んだ結果、その言葉選び(英国的な言い回し)から、字幕オペレーションのタイミングまで大満足だった、と海外公演の常連ならではの自信をのぞかせた。
人気俳優、松本潤の起用により日本やアジアからの観客が詰めかけたのは想定外で、カーテンコールで舞台の俳優たちに向けて一斉に携帯(カメラ)をかざす観客たちにはこれが今日の演劇鑑賞なのかと驚いたと振り返る。現地の演劇関係者と話し、アニメ題材の舞台の台頭やポップスターの起用による観客動員狙いについて、演劇界の将来に対する不安を日英で共有したと話す野田だが、自分自身の演劇、活動について客観的に、そして定期的に検証をするためにも今後も海外公演を続けていくと話す。
1992年の1年間のイギリス留学時にサイモン・マクバーニー率いる劇団コンプリシテのワークショップに参加するために通ったというサドラーズ・ウェルズ劇場での3日間の公演に駆けつけてくれた当時からの英国演劇人の友人たちとの再会も、多忙な演劇人野田秀樹のエネルギー補給には欠かせないと創作の秘密を語り、2026年には新作での再度の海外公演を目指すと楽しみなニュースを明かしてくれた報告会だった。
「正三角関係 Love in Action」世界配信が決定
配信期間
2024年12月2日(月)12:00~ 2025年1月14日(火)23:59
■配信チケット <販売期間>
2024年11月25日(月)12:00~ 2025年1月14日(火)18:00
<配信チケット料金>
¥3,300(税込)
<チケット販売URL・配信プラットフォーム>
◎イープラス(Streaming+)
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