2026.07.22

今年も思わぬ隕石を発見する芸術祭「秋の隕石2026東京」が待ち遠しい

2025年秋、岡田利規アーティスティック・ディレクターのもと開催された第一回「秋の隕石2025東京」が広域を視野に入れた劇場へのアクセシビリティの拡充を掲げ、多くの子供たちから演劇入門者の大人らを呼び込み盛況のうちに幕を閉じたのは記憶に新しいところ。第一回目の興奮覚めやらぬ中、早くも10⽉9⽇から11⽉3⽇までに開催される「秋の隕石2026東京」のプログラム発表に伴う記者懇談会が7月22日にメイン会場となる東京芸術劇場で行われた。

秋の隕石2026東京 記者懇談会

撮影:加藤甫/提供:東京舞台芸術祭実行委員会
Photo by Hajime Kato / Courtesy of the Tokyo Festival Executive Committee

ダンスや演劇、 オブジェクトシアターなどの「上演プログラム」が13作品、ワークショップやトークなどの「上演じゃないプログラム」が4つ、来場サポートとして2つの事業を含むウェルカム体制で構成された今年の「秋の隕石2026東京」について、昨年に引き続きアーティスティック・ディレクターとして指揮をとる岡田は会見冒頭、「2026年度のプログラムにとても自信がありますし、本日皆様に発表できる日が来たことをとても嬉しく思っています」となんともワクワクする言葉で口火を切った。

「隕石という言葉に込めた思いですが、我々は普段暮らしている際に出会っていないものについて考えることはないと思います。しかし、そんな我々の中に存在していなかったものがやってくることでそれらに出会うという機会を私は何よりも欲しています。そのように私が求めるものは多くの人たちと共有するに値するものであるというコンセプトのもとでこのフェスティバルを行なっていて、今回に関してもそのような“出会えていないもの”をラインナップすることができました。」

秋の隕石2026東京 記者懇談会
撮影:加藤甫/提供:東京舞台芸術祭実行委員会
Photo by Hajime Kato / Courtesy of the Tokyo Festival Executive Committee

「本日ここに集まっていただいた参加アーティストさんたちは「隕石」という言葉に託したテーマやコンセプトを持った作品を創作しているのと同時に芸術という美学(aesthetics)を有しているものを提供してくださいます。その部分がこの社会においてどのような力、意義を持ち共有されていくのかということを今後進めて行きたいと思っています。そのために、プレスの方々により理解していただくため、本日はこの記者懇談会を開くことにしました」と話し、登壇した芸術祭参加のアーティストたちと対話をしながら作品について、また「上演プログラム」に選んだ理由について語った。

(ここからは記者懇談会に登壇したアーティストとアーティスティック・ディレクター岡田利規による対話のレポートを当日行われた順に紹介する)

(1)あぃたら えィ(新井英夫×板坂記代子×山田衛子)『さん まるだが だんころ 3 〜音と動きのパフォーマンス〜』

日程:10月9日(金)・12日(月・祝)

会場:東京芸術劇場シアターイースト

©︎aitara-ei
©︎aitara-ei _ 糀屋_©︎aitara-ei _ Kouji-ya

新井:私の声は聞こえているとは思いますが、皆さんは何を言っているのかはわからないでしょう。(人工呼吸器のために声帯を取ってしまっているので)

僕はいま実際にかすかな声しか出ないし伝わらないことが多いけれど、喋りたいことや伝えたいことがたくさん体の中にあります。“小さく弱くゆっくり”という表現に対し、受け取る側が感覚を開くことで“世界の解像度がもっと上がるんじゃないか”と思います。

板坂:かすかな変化、微妙な違いを演者がお互いに感じ合い、新しいかすかさを見つけていくような緊張感のあるステージを3人でその場で作っていけたらと思っていて、さらにその舞台上の緊張感が会場の空気を動かすことができれば良いなと思っています。

(2)花形槙 「エルゴノミクス胚」

日程:10月29日(木)〜 11月1日(日)

会場:東京芸術劇場シアターイースト

Photo by Keita Otsuka
ⓒKeita Otsuka

岡田:花形さんの“椅子になりたい”という欲望は根源的なものなのかもしれませんが、とても変態的で“隕石”的なものを感じています。その欲望についてお話しいただけますか。

花形:椅子に座ることによって人はこの世界の役割に収まることができる、つまり椅子が空のスロットであるように僕には見えています。例えば、電車内でシートではなく床に座っていたら乗客にはなれないのではないでしょうか。どうしたら私はあらゆる社会的な振る舞い、人間としての振る舞いの外側へ行けるのかをずっと考えてきました。そんな中、椅子に座るということがこの社会へ接続することができる滑らかなインターフェースだとした時に、世界の外側へ行くために、いっそ椅子そのものになることを欲したのです。椅子の中に自分を見出すとか、自分が椅子として見出されるといったことから、椅子と私自身との関係を「捻転」することで、この世界の外側へと躍り出てしまう、ということを。

(3)ダダルズ 野外公演『よだれ観覧車』

日程:10月17日(土)〜18日(日)

会場:GLOBAL RING THEATRE(池袋西口公園野外劇場)

秋の隕石2026東京 記者懇談会

撮影:加藤甫/提供:東京舞台芸術祭実行委員会
Photo by Hajime Kato / Courtesy of the Tokyo Festival Executive Committee

岡田:今回は「秋の隕石」からの要望により池袋西口公園野外劇場(GLOBAL RING THEATRE)での上演となったわけですが、その野外公演ということへの意気込みを聞かせてください。

大石:2023年から自分で書いた言葉を自分で言うという形式で、作・演出・出演全てを自分で兼ねるというパフォーマンスをやってきました。私はこの「よだれ観覧車」という戯曲で第70回岸田國士戯曲賞(2026年)を受賞しまして、その時の選考委員であった岡田さんが選評の中で“(作者は)何の文脈も共有できるとは思っていないのではないか”といったことを述べていました。

岡田:それについてはどう思いましたか。

大石:自分の感覚を辿っていくときに、これだからこうだというような普通の文章では収まらないところまで行きたいと思っています。そういった言葉はある人にはすごく伝わるかもしれないけれど伝わらない人も増えてしまう。そして、そういった言葉はある種守られた空間である劇場ではなく、通り過ぎられてしまうかもしれない野ざらしなところ、の方があっているのではないかと感じています。野外のノイズがたくさんある空間で自分の言葉をどう聞かせられるのか、これまでやったことがないので怖い反面、適しているのではないかと思っています。

(4)虹組ファイツ 『第11回 虹組学園 秋の大文化祭』

日程:10月25日(日)

会場:東京芸術劇場シアターウエスト

大谷:この芸術祭に参加させていただくことになってから、あらためて自分達を見直した際に、結構「隕石」みがあるなと思いました。

オリジナル楽曲は100曲以上あります。そしてもちろんメンバー全員がゲイです。また非営利団体なのでメンバーは普段それぞれの仕事をしながら、週末に集まって作品を作り上げています。考えれば考えるほど、唯一無二の団体だなと思っています。隕石として胸を張って参加したいと思います。

岡田:その唯一無二の存在自体も紹介したいなと思い、隕石にお招きしました。

(5) 山城知佳子『リコーリング(ス) ― シアトリカル・バージョン』

日程:10月30日(金)〜11月3日(火・祝)

会場:東京芸術劇場プレイハウス

Photo by Hideaki Higa ©Chikako Yamashiro 那覇文化芸術劇場なはーと公演記録
Photo by Hideaki Higa ©Chikako Yamashiro 那覇文化芸術劇場なはーと公演記録

岡田:今回美術館という空間から劇場へ場所を移してのバージョンを作りたいと思った、そのモチベーションは何ですか。また今回東京の公共劇場で上演する意義についてお話いただけますか。

山城:映像作家として、その一度きりではない再現性に惹かれ、30年間映像作品を作り続けてきました。一方で、ある時から、映像だけでは届かないものがあるのではないか、と考えるようになったんです。撮影中は、その場で人や出来事に関わり続けられるのですが、作品が完成すると、そこから先は観客に委ねられます。そのことに少し物足りなさを感じるようになりました。そこで舞台を観に行くと、上演のたびに作品が更新され、作り手も観客もその場に立ち会う劇場空間に惹かれるようになりました。

一方で最近、幼い頃から沖縄で平和教育を受けてきたけれど、過去のことを学ぶためだけに平和教育を受けてきたのだろうかと疑問に思うようになってきました。なぜなら沖縄でこれまでなかったようなこと、例えば元々無かった島にも基地が増えてきていることなどを目にするようになってきたのですが、その時に咄嗟に反応できない自分がいたのです。そこで、撮った瞬間に過去になってしまう映像制作を続けてきたことも関係しているのではないか、自分自身の身体もまた、戦争を過去のこととして捉えているのではないか、と問い始めました。沖縄戦の記憶を、過去の出来事として学んでいるだけでは、身体は動かない。現在の問題として経験し直す必要があるのではないかと考えるようになりました。それにはどうすればよいかと考える中で、私はインスタレーション作品で、映像を受動的に鑑賞するのではなく、観客自身が歩き、空間を移動しながら作品へアクセスする形式を試行錯誤するようになりました。身体が移動すると、見える景色だけではなく、自分自身の感じ方も変わってくるからです。さらに、鑑賞後にその経験について他者との対話が生まれる場も目指しました。そうした考えをさらに発展させた先に、劇場空間で《リコーリング(ス)―シアトリカル・バージョン》を発表するという現在の制作へとつながっています。

東京での上演についてですが、私は沖縄で生まれ育ち、6年前からは大学の仕事で毎月沖縄と関東を往復しています。そうした中で、茨城で自衛隊基地の風景を見たときに、沖縄と重なる感覚を覚えました。さらに各地を移動する中で、日本全体が沖縄と地続きであるように感じる瞬間が増えていったんです。

私自身、米軍基地の風景にどこか故郷のような感覚を抱く自分に気づきました。頭では違和感を抱いていても、身体は刷り込まれた風景に反応してしまう。その矛盾に気づいたとき、自分の身体もまた、歴史や社会によって知らず知らずのうちに条件づけられているのではないか、と考えるようになりました。そのことに気づいてから、自分が移動することの意味も変わってきたんです。移動することで、それまで当たり前だと思っていた身体や風景を、少し違う角度から見られるようになりました。

私が移動していくことで、日本は沖縄なんだと思えるようになってきたんです。そう思えるようになると、人ごとではなくなるし、沖縄と本土という二項対立で語られることもひっくり返せる。そう考えるようになってからは、沖縄を一つの起点としながら、その土地で出会う人々との対話が生まれる場を、芸術作品で生み出したいと考えるようになりました。

(6)シアター能楽  英語能『青い⽉のメンフィス』

シアター能楽  英語能『青い⽉のメンフィス』

日程:10月10日(土)〜11日(日)

会場:東京芸術劇場プレイハウス

岡田:「能」という形式に何を見出していますか。

エマート:多くの人が「能」は動きが少なくてつまらないといった感想を述べると思いますが、私はそのゆっくりとした動きの中に大きな力を感じています。

オグルビー:私は以前演劇をやっていたのですが、今はもっぱら能だけをやっています。やはり演劇と能は違います。能楽師は役者ではないですし、役者は能楽師ではないのです。能楽師はスポーツ選手に近いと思います。ストーリーがどうと言うよりも型などの細部を鑑賞するのが面白いのだと思います。

—実際にパフォーマンスで使用するエルヴィスの面を披露。

岡田:お聞きしたところによると、エルヴィスの面はある時代の彼に特化したものではなく、いろいろな年代のエルヴィスを混ぜ合わせたものだとか。

オグルビー:目は最後の時期の40代、哀しい目で、頬は映画によく出ていた30代、顎と口は若い時、そして髪型は28歳くらいですかね。

撮影:デビッド・サタースキー
Photo by David Surtasky

(7)ジュンコエモト『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』 via Tokyo Metropolitan Theatre

日程:10月16日(金)〜18日(日)

会場:東京芸術劇場シアターイースト

撮影:曳野若菜_©︎Wakana Hikino

岡田:江本さんの作品には美学性が明確に示されていると感じました。

江本:美学ということに関して言うと、広告的表現をしない、消費物にさせない、特権的になりたくないと思いながら作品を作ってきましたが、今回の作品ではそれら全てをひっくり返すことになります。

レズビアンの恋愛、生き方を描くわけですが、それが魅力的であるとか、一方的な価値観を作品を通じて広報する、そういった広告的な行為を厭いません。

昨今、社会に浸透しているLGBTQを扱った作品の多くは異性愛者というマジョリティを観客対象としていることに気づきました。それらはマジョリティの観客が納得しやすい形に作られていて、そこに自分はいないなと感じました。マイノリティを題材にしつつ、マジョリティの消費のためにあつらえられた作品を見るのはつらいです。同性愛者、特にレズビアンが「明日忘れてもいいくらいの消費物」として楽しめる作品がこの社会にもっとあってほしいと思います。だからこの作品を、私は消費物として作ります。

マイノリティに対して作品を作ることは、マイノリティの存在を忘れない、というメッセージにもなると思います。商業であればマジョリティに向けて作品が供給されることは、当然の理屈かもしれませんが、その理屈を無視して、大都市の公共劇場でマイノリティに呼びかけられる作品が上演できることに、意味を感じています。そのために、わたしが演劇を作って発信できるという特権を大いに利用したいと思います。

(8)捩子ぴじん+YCAM『せいせいのせんせい』

日程:10月9日(金)〜12日(月・祝)

会場:東京芸術劇場シアターウェスト

撮影:守屋友樹/写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]
Photo by Yuki Moriya Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
撮影:守屋友樹/写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]
Photo by Yuki Moriya Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

岡田:今後さらに普及していくAIのある世界と向き合うというコンセプトの作品を子供のために作っているということで、とても重要なものだと思います。

捩子:OpenAIがChatGPTを発表してから1年ぐらいの時にこのプロダクションの制作の依頼がありました。ロボットとAIを使った子供向けの作品を、且つ、この作品で学校を巡回したいという希望でした。2025年暮れの初演の際には実際、親子で劇場へ来るというのはハードルが高いようで子供は観客全体の1/3未満ぐらいしかいませんでした。なので、今回はぜひ多くの子供たちに来場してもらいたいと思っています。AIは確実に私たちの生活にさらに多くの場面で関わってくると思います。今の子供たちは私たちとは全然違う世界を生きることになるでしょう。そのためにも色々と知っておかなければと思いながら創作しました。

そのほかの上演プログラム

*クリストファー・リューピング 『渇望』 サラ・ケイン作

日程:10月17日(土)〜18日(日)

会場:東京芸術劇場プレイハウス

©Thomas Aurin
©Thomas Aurin

*アナカルシス・ラモス/ポルノトラフィコ 『オカンとカネ』

日程:10月16日(金)〜18日(日)

会場:東京芸術劇場シアターウエスト

©INBAL CITRU Gabriel Morales
©︎Nicole Medina Ramírez

*ナディア・ブグレ 『バーニング・ガールズ』

日程:10月23日(金)〜25日(日)

会場:東京芸術劇場シアターイースト

©Anne Volery
©Anne Volery

*岡田利規&山田和樹 東京芸術劇場芸術監督 コラボレーション企画

『静寂のガツンとした一撃』

日程:10月25日(日)

会場:東京芸術劇場アトリウム

*アヒェ・エンジニアリング・シアター 『白い部屋』

日程:10月31日(土)〜 11月2日(月)

会場:東京芸術劇場シアターウエスト

©︎internationales figuren.theater.festival
Photo:Erich Malter
©︎internationales figuren.theater.festival
Photo:Erich Malter

秋の隕石2026東京

会期:2026年10月9日(金)〜11月3日(火・祝)

会場:東京芸術劇場、GLOBAL RING THEATRE (池袋西口公園野外劇場)

詳細:https://autumnmeteorite.jp/ja

   https://autumnmeteorite.jp/en