2025年前半の英国で注目の舞台をリストアップ

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英国の有力紙The Guardianが選ぶ、2025年に観るべき舞台。

シェイクスピアやチェーホフの古典の翻案舞台からボリウッド映画の舞台化、ヒッチコック映画の舞台化、英国が誇る作家サラ・ケインの代表作の再演舞台、ゲイリー・オールドマンやケイト・ブランシェットらの久々の出演舞台などなど、バラエティーに富んだチョイスが目をひくラインナップ。

Elektra(エレクトラ)

映画「ルーム(2015)」「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト(2023)」などに出演したアメリカ人女優Brie Larsonが正義、そして復讐の枷に苦しむ娘を描いたソポクレスによるギリシャ悲劇「エレクトラ」でウェストエンドデビューを果たす。著名な詩人Anne Carsonの翻訳戯曲を「オクラホマ!」の大胆な演出で知られるDaniel Fishが演出する。

1月13-18日:ブライトンTheatre Royal Brighton

1月24日 – 4月12日:ロンドンDuke of York’s theatre

Death and the King’s Horseman(死と王のホースマン)

ノーベル賞受賞作家Wole Soyinkaの1975年執筆戯曲。1940年代のナイジェリアで起きた実話に基づいている。君主の死に際しての宗教儀式を取り仕切るように命じられたことで精神的な重大局面を迎えることとなった馬の世話係のものがたりでMojisola Kareemが演出を担当。音楽とダンス、ヨルバ族の宗教心が作品の中心に据えられる。

2月3-8日:シェフィールド Crucible theatre

Romeo and Juliet(ロミオとジュリエット)

シェイクスピアの若者たちの恋愛のもつれによる悲劇がBristol Old Vic劇場とHackney Empire劇場との共同制作、さらにはThat’s Rapカンパニーのコラボレーションでヒップホップ、R&B調の作品としてコベントリーのBegrade劇場で上演される。エリザベス調と現代が混在していて、ちょっと2019年Jamie Lloyd演出のラップ調「シラノ・ド・ベルジュラック」のようでもある。同じようにヒット作となるのかどうか、注目だ。

2月21 – 3月8日:コベントリー Belgrade theatre

The Seagull(かもめ)

このチェーホフ芝居でもって、Cate Blanchettがアルカジーナ役で久々にステージに戻ってくる。映画での輝かしい実績を誇る彼女だが、実のところ舞台に根をおろしている女優でもあって、以前はSydney Theatre Company の芸術監督を務めたことがあり、近年ではNational Theatreの委員会メンバーの一員として名を連ねている。今作ではDuncan MacmillanとThomas Ostermeierによる最新の翻案戯曲を採用している。

2月26日 – 4月5日:ロンドン Barbican theatre

North by Northwest(北北西に進路を取れ)

ヒッチコックの1959年制作スパイスリラー映画「North by Northwest(北北西に進路を取れ)」の翻案舞台は原作を再生することに関して魔法のタッチでその手腕を発揮する演出家Emma Riceにうってつけのように思える。近年彼女が手がけたミュージカル「The Buddha of Suburbia」の改訂舞台のように、ユーモアが加味され、大胆な素晴らしい工夫が施されることはお墨付きと言ってもよいだろう。

3月18日 – 4月5日:ヨーク York Theatre Royal

その後国内ツアーの予定

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Rhinoceros(犀)

3年前、アルメイダ劇場はキャサリン・ハンターとマルチェロ・マグニ夫妻の共演で本当に素晴らしい舞台、イヨネスコの「椅子」を上演。今回はあるフランスの村で住民たちが次々と犀に変容していくという、イヨネスコ作品の中でも飛び抜けて不条理な劇「犀」を前回同様にOmar Elerianの翻訳・演出で上演する。

3月25日 – 4月26日:ロンドン Almeida theatre

Manhunt(指名手配)

2010年、ダラム刑務所から釈放された2日後にRaoul Moatがイングランド北東部で残忍な銃乱射事件を犯したことで、英国現代史上に残る大規模な犯人追跡が行われた。優れた定評のある作家・演出家Robert Ickeがこの事件をもとに書き下ろしたのが今作だ。

3月28日 – 5月3日:ロンドン Royal Court theatre

Through the Shortbread Tin(ショートブレッド缶を通して言えること)

史上最大の文学的でっちあげに関してのものがたりとみなされ、ゲール語の歌と共にスコティッシュ訛りで上演されるこの劇はこの作品が嘘の上に成り立っているのかどうかを探るため、ハイランドの歴史に関する古代の叙事詩を再訪する。スコットランド人のMartin O’Connorによるこのショーは(スコットランド)の文化的アイデンティティ、神話、そしてそれらの真意についての問いを投げかけている。

4月1&2日:スコットランド Melrose Corn Exchange theatre

その後ツアーの予定

Krapp’s Last Tape(クラップの最後のテープ)

ハリウッドを征服したゲイリー・オールドマンが彼が初めてプロとして演技の仕事をした劇場に戻り、サミュエル・ベケットの老い、記憶の曖昧さ、孤独を描いた一人芝居で感傷的なキャラクターを演じる。オールドマンは今作で演出と美術も手がけている。オールドマンの多くのファンにとっては見逃せない舞台となるだろう。

4月14日 – 5月17日:ヨーク York Theatre Royal

Here We Are

スティーヴン・ソンドハイムの最後のミュージカル作品、遅い朝食会の集まりが去来して繰り返される内容で、ソンドハイムの死から2年後の2023年にニューヨークで世界初演された。シュールレアリズムの芸術家として知られるルイス・ブニュエルの2つの映画作品からインスパイヤされたこのミュージカルのこれが英国初演となる。David Ives脚本で2度のトニー賞受賞演出家Joe Mantelloが演出を担っている。熱烈なミュージカルファンにとって、待ちに待った上演だ。

4月23日 – 6月28日:ロンドン National Theatre

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Come Fall in Love

1995年公開、それまでのレコードを塗り替えたボリウッドの大ヒットロマンス・ミュージカル「Dilwale Dulhania Le Jayenge (The Brave-Hearted Will Take the Bride)」がオリジナル映画の監督Aditya Chopraの手によって、東洋x西洋の壮大なショーとなって上演される。インドでお見合いを控えた若い女性の結婚前の大冒険、という筋書きだ。

5月29日 – 6月21日:マンチェスター Manchester Opera House

4.48 Psychosis(4.48サイコシス)

サラ・ケインの最後の戯曲は、彼女の死後に上演された際、多くの人から演劇的遺書と解釈された。生きるべきか死ぬべきかを議論する主人公を扱ったこのRSCとRoyal Courtの共同制作作品では25年前のオリジナル制作チームとキャストが帰ってくる。James Macdonaldが演出、Daniel Evan、Jo McInnesとMadeleine Potterのキャストで再演が決定した。

6月12日 – 7月5日:ロンドン Royal Court theatre

7月10日 – 27日:ストラットフォード・アポン・エイボン the Other Place, Stratford-Upon-Avon

Lost Atoms(失われた原子力)

「Succession and Killing Eve」の作者Anna JordanがFrantic Assemblyの30周年記念公演のために書き下ろした今作はあるカップルの悲喜交々の恋愛ものがたり。Scott Grahamが演出を担当する。

9月以降、レスター Curve劇場、ロンドン Lyric Hammersmith劇場など各所をツアーで回る予定

The Red Rogue of Bala(バラの赤毛のならず者)

Chris Ashworth-Bennionのバー(サイズ)のコメディ芝居。19世紀ウェールズで“Coch Bach y Bala (バラの小さな赤毛者)”と呼ばれた脱獄者で泥棒のJohn Jonesのストーリーで、ルティン刑務所から何度も脱獄したことからウェールズのフーディーニ(有名な脱出王)の異名を得た。

11月3日 – 22日:ウェールズ Theatr Clwyd, Mold