(The Guardian Mar 8, 2022 Harriet Sherwood の記事より)
ミュージカル「キャバレー」と「エニシング・ゴーズ」が一歩リードか
その他にも「Life of Pie(パイの物語)」など、今年の賞の有力候補はリバイバルのミュージカル作品が優勢とみられている。
ウェストエンドの劇場を華やかでありながらどこか不吉な空気が漂う1930年代のベルリンのナイトクラブへと変身させたミュージカル「キャバレー」は11分野でノミネート。ナイトクラブのMCを演じたエディ・レッドメイン、そしてサリー・ボウルを演じたジェシー・バックリーがその卓越した演技でともにミュージカル部門の最優秀主演男優・女優賞にノミネートされている。
そして、昨年、バービカン劇場で記録的な大ヒット、1週間で£717,000(約1億2千万)を稼ぎ出し、「キャバレー」同様に多くの賞賛を得たコール・ポーターのクラシックミュージカル「エニシング・ゴーズ」も有力候補の一つだ。サットン・フォスターが最優秀主演女優賞に、ロバート・リンゼイが最優秀主演男優賞にノミネートされ、全部で9つの分野でのノミネートとなった。
この両作品はミュージカルのベスト・ミュージカル賞候補にも選ばれているのだが、2作品の他にはアルメイダ劇場の「春のめざめ」がノミネートを果たしている。
2002年にブッカー賞を受賞したヤン・マーテルの「Life of Pie(パイの物語)」の舞台版だが、大型のパペット(人形)を見事に操り、さらに特殊効果を活かした演出で演劇部門でベスト・ニュープレイ賞を含んだ9つの部門でノミネート、今作で大型のトラのパペットを操作した7人の役者は全員が最優秀助演男優賞の候補となっている。
その他には、
ウェストエンドデビューとなった「2:22 A Ghost Story (午前2時22分の幽霊物語)」でリリー・アレンが最優秀主演女優賞に、クシュ・ジャンボがヤング・ヴィック劇場制作の「ハムレット」のハムレット役で同じく最優秀主演女優賞にノミネートされている。ちなみにアレンの「2:22 A Ghost Story (午前2時22分の幽霊物語)」はベスト・ニュー・プレイ賞の候補に選出されている。
ナショナル・シアター制作の80年代、エイズが蔓延したニューヨークを舞台したラリー・クレイマー作「The Normal Hear(ノーマル・ハート)」は、ベン・ダニエルズの最優秀男優賞をはじめ、リズ・カーの最優秀助演女優賞など5部門でのノミネートを果たした。
ミュージカル「バック・ツー・ザ・フューチャー」は7部門、ミュージカル「ムーラン・ルージュ」は5部門、ボブ・マーリーの生涯を描いたミュージカル「Get Up, Stand Up!」、そしてミュージカル「Frozen(アナと雪の女王)」は4部門でノミネートされ、ミュージカル「The Drifters Girl」主演のビバリー・ナイトは主演女優賞の候補となっている。
スコットランド、グラスゴーのトロン劇場で幕を開けヒットとなったジェーン・オースティンの傑作小説に登場する魅力的な女性たちを描いた「Pride and Prejudice* (*Sort of) (高慢と偏見のようなもの)」は3人(部門)が候補に—最優秀エンターテイメント/コメディプレイ賞、そして最優秀助演女優賞の候補に2人の名前が挙がっている。一方で、今作に関しては好評を博したにも関わらず、Covidが再び猛威を振るったため、客足が鈍り、1月に公演が終了してしまったのが残念だ。
注目の最優秀演出家賞の候補には「キャバレー」のレベッカ・フレックノール、「Constellations(星ノ数ホド)」のマイケル・ロングハースト、「エニシング・ゴーズ」のキャスリーン・マーシャル、そして「Life of Pie(パイの物語)」のマックス・ウェブスターといった面々が名を連ねている。
ロンドン演劇協会のエクゼクティブでオリヴィエ賞のエクゼクティブ・プロデューサーでもあるジュリアン・バードは「今年の本当に素晴らしい候補作の数々が世界をリードしているロンドン演劇界の幅の広さ、見事な多様性を示していると思いますし、ロンドンの演劇は素晴らしい創造性、そして困難な時期があったにもかかわらず見事な回復力をみせたと思っています」と話している。
「2年間の閉鎖の後でまたこうして演劇関係者が集い、素晴らしい才能を有する演劇人たちを讃える機会を持つことができることを本当に嬉しく思っています。」
オリヴィエ賞の授賞式は4月10日(英国時間)、ロイヤルアルバートホールで開催される。