新しい歌舞伎鑑賞体験を提供

MoN歌舞伎舞踊公演 ー京鹿子娘道成寺ー

「100年先へ文化をつなぐ」をミッションに掲げてこの春にオープンした大小の劇場、展示空間、イベント会場が入った文化施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」。

そのMoN Takanawaが日本を代表する伝統芸能の一つである歌舞伎を今日の技術を駆使した“未来へ手渡すためのデジタルアーカイブ”として上演するシリーズの第一弾は昨年八代目を襲名した尾上菊五郎による女形舞踊の大曲『京鹿子娘道成寺』。

最新LEDビジョンを活用した映像演出を施し、「MoN Takanawa: The Museum of Narratives Box1000」劇場の舞台で菊五郎が少女から恋をした狂気の女性へと変遷していく白拍子花子を演じます。冒頭、菊五郎による口上から始まり、上村吉太朗による歌舞伎の歴史や見どころ、そして『京鹿子娘道成寺』作品の解説へと続き、さらに菊五郎が『京鹿子娘道成寺』に寄せる思いを語った特別映像が上演され、最後に『京鹿子娘道成寺』の舞踊という四部構成になっています。

舞台美術を映像に作り直しての上演となる今作では、あたかも白拍子とともに満開の吉野山の山中に分け入っているような感興へと誘います。最新のテクノロジーと伝統芸能の魅力が融合した新しい歌舞伎舞踊体験となること間違いなしです。

MoN歌舞伎舞踊公演ー京鹿子娘道成寺ー 舞台イメージ

八代目尾上菊五郎が思う『MoN歌舞伎舞踊公演ー京鹿子娘道成寺ー』とは 

Q: 2025年5月の襲名披露公演の演目に「娘道成寺」を選んだ経緯と背景を教えて下さい。

「音羽屋にとりまして「娘道成寺」はとてもゆかりのある演目です。私が十代のころ、祖父梅幸が父と私と一緒に三人で道成寺をやろうと発案し「三人道成寺」を上演致しました。私自身まだ若かったもので、女形の舞踊というものがまだまだ手に入っていなかったのですが、祖父が厳しく稽古をつけてくださいました。父と祖父と三人で道成寺を踊らせていただくことにより、自分のいたらなさ、そして音羽屋に生まれたことの自覚を持たせてもらいました。その後「夫婦道成寺」や「二人道成寺」とさまざまな道成寺を踊らせていただく中で、型の大切さ、そして花子が持つ心情、つまり女形百体と言いますか、あどけない少女から壮年期、そして恋を知った女性まで、衣装を変えつつ、さまざまな道具を使いながら女心を描きました。そして鐘に対する女の情念、執念がその恋心の中に出てくるというものを「道成寺」の舞踊の型で学ばせていただきました。そのようなことから襲名で「道成寺」を舞いたいと思いました。

襲名というのは名前継ぐのと同時に先人たちからの型や魂を受け継ぐことであり、それを受け継いだことで後世へ繋げていくのが襲名の役目だと思っています。また、私が「道成寺」で音羽屋に生まれたということを自覚したという思いを息子にも持ってもらいたくて「道成寺」を襲名の演目に選びました。*

*2025年5月歌舞伎座での八代目尾上菊五郎と六代目菊之助の襲名披露興行、および秋の地方公演において、そこにもう一人坂東玉三郎を加え「三人花子(三人道成寺)」を上演し大きな話題を呼んだ。

Q:伝統とは何だとお考えですか。またそれを継承する思いについてお聞かせ下さい。

歌舞伎が始まって以来およそ400年、また菊五郎はおよそ300年続いてまいりましたが、その間、代々が芸を磨いてその次の世代へ芸の型や魂を渡してきました。その魂を受け継ぐことで、本質として何を守らなければいけないのかということを考え守りつつ、その時代時代のお客様にどうしたらその本質を届けられるのかということを創意工夫してきたのが伝統だと思います。伝統は守るべきものを守りながら、時代によって工夫を凝らしていくことであり、その伝統を継承した上で次の世代は脚本、役の心情を深く捉え、自分なりの型を大事にした上で生まれてくる自然的な表現を見出していくのが継承していく者の役目だと思っています。守るべきものを守り、変化を恐れず、そして本質を変えずにお客様にその本質を届けることが“かぶく”ということだと思います。

Q:伝統と現代、今回のように新しい技術と組み合わせるということについてはどうお考えですか。

今回、新しい技術をお客様にお伝えすることが目的になってはいけないと感じています。あくまでも我々が本質的に守ってきたものをいかにしてお客様へお伝えできるのかをテクノロジーの力をお借りしてお客様へお伝えするわけです。それは決して簡単にエキサイトするような浅い感動ではなく、深く染み入るような感動こそが歌舞伎が本来持っている感動だと思います。伝統と革新、伝統とテクノロジーは対立するものではなく、それらが同軸に乗ることによって、どちらかに偏ることなく、テクノロジーが歌舞伎の本質をお伝えする力になってもらえればと願っております。テクノロジーを駆使することによって歌舞伎の魅力をより深くお客様にお伝えできれば、と思っています。

歌舞伎では当たり前の回り舞台や宙乗りなども、もともとは場面転換をスピーディーに行なってお客様を飽きさせない工夫であって、お客様と役者の距離を縮めてより役の心情に寄り添えるようにするといったことを目的としたテクノロジーとの融合と言えるでしょう。今回、最新のLEDを使うことで花子の心情ですとか道上寺の舞踊の詳細が表現され、さらに道成寺の景色によりお客様が近づいていただけるような演出ができれば、お客様に道成寺の魅力をより感じていただけるのではと思っています。

Q:今回上演をする新しい文化施設MoN Takanawaについてはどう思われますか。

MoN Takanawaに関しては伝統と最先端が自然と共存している空間だと感じています。今後もさまざまな取り組みが可能だと思っています。たとえば歌舞伎体験コーナーのような、それによってより人々が歌舞伎に没入できるような体験がこちらでできれば面白いと思います。

Q: MoN Takanawaでは継続的に歌舞伎のプログラムを上演していきたいと思っているのですが、今後チャレンジしてみたいことはありますか。

忠臣蔵で有名な泉岳寺がある伝統のある街高輪で、ぜひその「忠臣蔵」を上演したいと思っています。そのままでなくても、たとえば新作歌舞伎として、いつか上演したいと考えています。「忠臣蔵」で言うと、昔も今も人のことをいかに思うかということは変わらないので、古典の力を通じて日本人の美意識や日本人が大切にしてきた“人を思う”という心を伝える舞台をここ高輪ゲートウェイでテクノロジーを使って作っていきたいです。

Q:菊五郎さんがお弟子さんや息子さんへ日本人の心を伝えていく際に心がけていることはありますか。

歌舞伎の脚本を深く読むことです。名作と言われている古典歌舞伎には読めば読むほど、人を思う心とはどうゆうことか、というのが書かれています。それが鮮明に残っているものこそが現代にも残っていて、現代に通じるものばかりです。その意味で、若い人たちには歌舞伎の翻を読んでもらいたいです。

Q: 古典作品「娘道成寺」の花子を今回どのように演じるのか教えて下さい。

鐘に焼かれた安珍に対する思いを捨てきれず、清姫は白拍子の花子となって蘇ります。冒頭部分で人生のうつろいの儚さ、そして過ぎたものはもう戻らないという儚さが語られますが、きっと花子はどうしたら安珍のことを忘れられるだろう、解脱したいと願っているのだと思います。解脱を望みながら解脱できない人間の業がそこにあります。解脱を願う心に加え女性の執念と恋心といった三つの要素が舞台で絡み合っているのが道成寺の面白さだと思います。

MoN歌舞伎舞踊公演 ー京鹿子娘道成寺ー

会場:MoN Takanawa: The Museum of Narratives Box1000(JR東日本 高輪ゲートウェイ駅直結)

日程:

7月2日(木) 17:00

 7月3日(金) 12:00

 7月4日(土) 12:00/17:00

 7月5日(日) 12:00

チケット代:7,000円〜15,000円 (そのほかにU25割引チケットをMonTakanawaで販売)

▼出演
八代目尾上菊五郎、市村橘太郎、上村吉太朗 ほか

八代目尾上菊五郎

市村橘太郎
Photo courtesy of Shochiku
上村吉太朗
Photo courtesy of Shochiku

▼演目
一、開館記念口上
二、解説 歌舞伎のみかた
三、ドキュメンタリー映像
四、京鹿子娘道成寺

その他詳細:https://montakanawa.jp/programs/takanawa-kabuki