新国立劇場(NNTT)2026/2027シーズンのラインナップ発表

新国立劇場芸術監督 上村聡史

2026年9月から新国立劇場の芸術監督に就任する演出家の上村聡史(46)が2月16日に就任1年目となる2026/2027シーズンのラインナップを発表。

記者会見冒頭で上村新芸術監督は「お客様に感動を届けるという娯楽としての使命はもちろんのこと、それプラス感動以上のサプライズを届けるという国立の劇場としての役割を創り続けていきたいと思っています」とその意気込みを語った。

「演劇は時代と呼吸しながら変化、発展を遂げてきました。総合芸術である演劇では脚本以上に表現者の発する声や表現そのものが物語性を有します。こういった時代の変化の中で表現を含めた物語の更新、アップデートを目指していきたいと思っています。そのための視点として下記の4つの点をふまえた作品作りを考えています。

  1. 現代的、国際的、批評的

新作、古典を問わずその中に問題提起すべき事象を意識した現代性、そしてグローバルな価値観を意識した国際性、社会における役割を果たす批評性を踏まえた作品作りを目指す。

2. クロスオーバー、他ジャンルとのつながり

新しい試み無くしては前進は成し得ないと考え、音楽、ダンス、文芸、漫画、映像などのさまざまなジャンルのアーティストと交流し新しい表現の可能性を模索する。

3. 新しい才能との出会い

次世代の演劇の発展のためにも出演者、スタッフともに新しい才能を求め、そんな彼らが交流できる場所を目指す。そこには積極的なオーディションの開催、集団創作による制作、さらに「物語の探究」と称したプロジェクトを開催する予定。

4. 消費で終わらないパフォーマンス

舞台空間を構成する素材、資源等の再利用、また上演空間を工夫することでものづくりにおいて、一過性ではない価値観を提示する。

と話し、上演プログラムの7作品と3つのプロジェクトについての説明へと続いた。

(c) Nobuko Tanaka

2026/2027シーズン演劇プログラム

「巨匠とマルガリータ」

2026年11月

原作:ミハイル・ブルガーコフ

翻案:エドワード・ケンプ

翻訳:小田島創志

演出:上村聡史

新芸術監督の上村がブルガーコフ作品の演出を手掛けるのは2024年上演の「白衛軍The White Guard」に次いで2度目。抑圧的な社会を批評的に捉えた作者の眼差しは国益を優先する傾向にある今の世界においてこそ上演する意味に富んだ戯曲だと言えるであろう。過去に敬意を払い、今の視点でそれを語り、それを未来へとつなげる、そんな今作は演出家上村の私信と重なるところがあり、シーズンのオープニングふさわしいスペクタクル性をもった作品となると確信している。

Photo courtesy of New National Theatre, Tokyo

「巨匠とマルガリータ」キャスト

「ミノタウルスの皿」

2026年12月

原作:藤子・F・不二雄

脚色・振付・演出:スズキ拓郎

クロスジャンルの作品。漫画界の巨匠、藤子・F・不二雄が1969年に発表した短編SF漫画をもとに、ダンスカンパニーCHAiroiPLIN主宰のスズキ拓郎が脚色・振付・演出を手掛ける新作。“命を食する”がテーマである原作をダンス、映像を駆使して示唆に富んだ作品を届ける。4歳以上の子供の観劇が可能な舞台として幅広い世代の観客に楽しんでもらえる作品となると期待している。

漫画「ミノタウルスの皿」

「ナハトランド(Nachtland)」

2027年3月

作:マリウス・フォン・マイエンブルク

翻訳:長田紫乃

演出:柳沼昭徳

ドイツを中心に現代演劇をリードする劇作家マリウス・フォン・マイエンブルクによる2022年12月ベルリン初演の戯曲を長田紫乃翻訳、烏丸ストロークロック主宰の柳沼昭徳が演出する。昨今の非グローバリズムや排外主義といった右派ポピュリズムを風刺した家族劇となっている。父の遺品からヒトラー作と思われる絵画が見つかったことで巻き起こる騒動がブラックユーモアと共に描かれる。

「見えざる手」

2027年4月

作:アヤド・アクタル

翻訳:浦辺千鶴

演出:上村聡史

パキスタンのイスラム系テロ組織によるアメリカ人銀行家の誘拐事件を端に発した話で、英米で多くの賞賛を浴びた作品。アメリカ人作家アヤド・アクタルは身代金に関わる取引の中で、今作を世界経済から考察する分断をクライムサスペンス劇に仕上げている。緻密な心理戦を繰り広げる一方でのマネーゲームの果てにあるカタルシスという点に注目して欲しい。演出は上村聡史が担う。

「Ruined 奪われて」

2027年5月

作:リン・ノッテージ

翻訳:小田島則子

演出:五戸真理枝

2度のピューリッツァー賞に輝いているアフリカ系アメリカ人作家、リン・ノッテージの2008年初演作品(ピューリッツァー賞受賞)。コンゴ民主共和国における女性たちの実態にもとづくセンセーショナルな、そして生命力に溢れたものがたり。新国立劇場での「どん底」「貴婦人の来訪」の演出で高評価を得た五戸真理枝が演出にあたる。今作では一部のキャストについて公募オーディションを開催する予定。

「抱擁」

2027年6月

作・演出:山田佳奈

脚本家・演出家・映画監督であり劇団□字ック主宰の山田佳奈による新作書き下ろし。病に冒された母と出産を控えた娘の対話を軸に、無惨に命が奪われ、誰にも相手にされず孤独が蔓延しているこの世界で人はいかに尊厳を持って命を終えることが出来るのか、またどういった気持ちで新しい命をむかえれば良いのか、生と死をめぐる葛藤を日本的視線と国際的視線を交えながら考察する。

「エンジェルス・イン・アメリカ」

2023年公演より(撮影:宮川舞子)

2027年7月

作:トニー・クシュナー

翻訳:小田島創志

演出:上村聡史

2023年に新国立劇場で上村の演出した舞台を踏まえながら、新国立劇場がこれまでに上演した「レオポルトシュタット」(2022年、小川絵梨子演出)、「2024年、白衛軍 上村聡史演出」「巨匠とマルガリータ」(2026年、上村聡史演出)の舞台美術の一部を再利用して新たに創作をする。この舞台美術の再利用を「グリーン・リバイバル・ラボ」プロジェクトと名づけ、これからも少なくとも年に一度は継続していく予定。一過性では終わらない芸術の意味を資源活用の精神とともに提示していきたいと考えている。

2023年公演より(撮影:宮川舞子)

この「グリーン・リバイバル・ラボ」プロジェクトの他に、上村芸術監督のもと進めていくプロジェクトとして、

「集団創作による新作」—劇作コンペ、出演者フルオーディション

劇作家を公募し新作を依頼、演出家と方向性の検討を重ねた上で出演者はフルオーディションで決定。その後ワークショップを重ね、リハーサルを経て上演するというもの。

ドラマクエスト—物語の探究

国内外問わず、新しい形式の演劇を観客とともに考察し、共有していくプロジェクト。

・劇作家、演出家、俳優、そして様々な分野のクリエーターを迎えたトークイベント

・最新戯曲やトライアウトによる試作戯曲のリーディングイベント

・演技やスタッフワークの体験型ワークショップやレクチャー

などを開催する予定。

さらに将来の演劇文化発展の促進を促す目的で、若者や劇場体験が初めてという人たちへ向けて、「Theatre Day」と称した格安チケットの販売を考案中だと言うことだ。

新国立劇場に関する情報、演劇ラインナップの詳細: https://www.nntt.jac.go.jp/