Open-air event

今夏ライブシアターが戻ってくる

(The Guardian新聞より抜粋)

(c) Nicole De Khors / Burst

まず、野外劇の新作、ソロパフォーマンス、COVID-19にあわせ工夫をこらした少人数の観客向けの舞台がこの春から始まり、その後夏から秋にかけて、観客が集団での観劇に安心感を得られるようになってくると多くの主要劇場がそれに続くことになるだろう。

「今は小規模であることが重要」と話すのはフェスティバル・イベント協会Without WallsのMaggie Clarke。屋外でのショーの需要が以前に比べると2倍に増えていると言う。「現段階で21の新規屋外プロジェクトを抱えていますが、その多くがダンス演目です。その他の分野のものもありますが、それら全てに言えることはどれも小規模だということです。大きな劇場の室内での演目に関しては、まだ不安があります。というのも、経営母体がまだまだ盤石ではないからです。とは言え、色々なことが早足で進んでいくことになるでしょう。」

Shane Richie主演の人気ミュージカル「Everybody’s Talking About Jamie」は観客数を減らして、ヘンリー8世を取り巻く6人の女たちをポップに描いて大人気の「Six:The Musical」はこの春にウェストエンドに戻ってくる予定だ。

ソロパフォーマンスで気になるところとしてはTS Eliot作、Ralph Fiennes主演の「Four Quartets(四つの四重奏曲)」、そしてカンタベリー州のMarlowe劇場では地元の有名人たち—Jane Austen, Tracey Emin, The Clangers—をそれぞれ題材にしたBen Dicksonの新作シリーズが、やはり観客席を減らして6月から始まる予定だ。

イギリスやスコットランドで5月中旬ごろから始まるであろうこの劇場復活の第一の波では今後の英国における上演文化を刷新するような新方式や新しい柔軟なやり方をみることにもなると期待している。

多様な観客層を視野に入れたアヴァンギャルドな試みが過去1年間シャットダウン状態だったエンタメ業界に思わぬ成果をもたらすのでは、と専門家たちは見ている。

例えば、Exeter大学のPascale Aebisc教授は実験的演劇やヴァーチャルな演劇がもたらす影響に関して「それらの演劇はオンラインでのプラットフォームの可能領域を広げ、さらに観客の参加方法の幅を広げるでしょう」と話している。

実際、その方向で、Covidの状況を注視しながらの、pop up show(街角出没ショー)、体験型・参加型イベントなどが多く企画、上演されている。

「人々は思っているよりももっと開放的だし、何より彼らはそのようなイベントが好きなんですよ」とClarkeは言う。彼女はたとえウィルスが完全に収まらなくても、ある種のイベントは催行が可能であろうと予測している。

「輸送コンテイナーを使った移動型イベントとかKaleider社が開発したRobot Selfie (https://kaleider.com/portfolio/robot-selfie/ )なる技術でビルの側面にプロジェクション壁画を描き出すショーとか、様々なものが生まれています。」

また、スコットランドのPitlochry Festival Theatreは70周年サマーイベントとして屋外に80席の円形劇場を設置して今夏に上演することをつい先日発表した。

「人々は感染を心配して、劇場へ行くことへのためらいはしばらく続くでしょうね」と話すExeter大学のRachael Nicholas研究員。それゆえストリーミングやヴァーチャルな演劇の上演はこれからも続いていくだろうと彼女は考えている。

さらに言えば、通常よりもチケット販売の枚数が減っている分、割高となっている劇場へ通える人は少数なので大劇場やメジャーな演目の再開は遅れることになるとみられれている。

現にロイヤル・アルバート・ホールの広報担当は「我々は常に政府が提唱する劇場再開への安全目安を遵守しています。なので政府が5月17日までは最大収容人数が1,000人、そして6月21日には全面解放するという政策を発表してくれて、それが今後の計画実行の重要な目安となっています。とは言え、その日程に関してはまだ確定とは言えず、またその6月21日まで実質20%の収容人数(1,000人)でやっていかなくてはならないのは経済的にとても大きな負担となっています」と話す。

リヴァプールでは実業家David Rossと元National Theatreの芸術監督ニコラス・ハイトナーの協力のもと、安全なディスタンスや感染学上の安全を確保するため、数々のテストとしてのイベントが開催されている。その結果は5月中に政府に報告され、それに基づいて一般的な劇場再開の目処が示されると言う。

ロックダウンにより、若いフリーランスの演劇人—演者、デザイナー、スタッフーたちが職を失ったこと、そして多くの上演されなかった演目のことを考えると痛手が大きいのは確かだがエンタメ業界としては今は前向きな思考にシフトしている。

例えば、Curtain Callが始めたシアターPodcastsシリーズ「Ghost Shows」(https://podcasts.apple.com/gb/podcast/curtain-call-podcast/id1126091489 )ではライブパフォーマンスでは到達できな数の視聴者を集めている。

フリーランスのオペラ演出家Adele Thomas は上演中止となった演目の技術者や製作スタッフにインタビューをしてGhost Showsに投稿。

「お蔵入りとなったショーに関して、似たようなストーリーは沢山あります。今だに上演されなかった舞台を心に思い描きますし、そのリハーサルのまで想像しますよ。」