英国BBC Fourでバレエ関連のドキュメンタリー番組を制作しているEmma Cahusacは「今新たな男性ダンサーの黄金期をむかえている」と話す。(The Guardian紙から抜粋)
英国ロイヤルバレエで台頭してきた若手男性ダンサーたちにぜひ注目してほしいと言うのだ。
プリンシパルのMatthew Ball、Marcelino Sambé をはじめ、ソリストのCesar Corrales、William Bracewell、ファーストソリストのJoseph Sissensら、彼らの多くが英国内でバレエ教育を受けており、長い間海外の優秀なダンサーたちの加入に頼ってきたロイヤルバレエでメインダンサーの自国輩出の明るい兆しが見えてきたと記事は語る。
コロナの影響で自粛生活を送るダンサーたちに電話でインタビュー、彼らの今の声を伝えている。この黄金期を彩るダンサーたちの特徴として一人一人がそれぞれ違った個性、良さを持っていること。
例えば、英国北部リバプール出身のBall(現在26歳)は11歳からロイヤルバレエスクールで学び、その後順調にバレエ団でキャリアを積んだ生え抜きだ。カンパニーで主要な役を踊るかたわら、2018年にはマシュー・ボーンの「白鳥の湖」でゲストダンサーとして魅力的な男性スワン役を披露している。「彼は常に思考しているタイプのダンサーだね」とは同僚のSambé からのコメント。それに対し、学生時代からの友人であるBallは「Marcelino(Sambé)は常にエネルギーが満ちていて、陽気で活気あふれる奴だよ。彼の動きは水を得た魚のように活き活きとしているからね」と返す。バネの効いたジャンプと並んで彼の大きな魅力の一つである「満面のスマイル」は実は彼なりの舞台で自らを落ちつかせるための秘訣なんだとか。
キューバのバレエダンサーの息子として生まれたCorrales(23歳)はカナダで学び、17歳でイングリッシュ・ナショナル・バレエに入団、20歳の時にロイヤルに移ってきた。Ballはそんな彼を「彼は本当に熱い男で、1cmでも高く飛び、1回でも多く回るように努力を怠らないんだ」と賞する。
稀代のスター、ルドルフ・ヌレエフと同時代に踊っていた、今はロイヤルのバレエマスターであるChristopher Corralesは今は男性ダンサーに要求されるものが以前とはかなり違ってきていると話す。ヌレエフは確かに歴史に燦然と輝く逸材だが、それでも彼が今の時代に生まれていたら、彼の評価がそれほどまでになったかどうかはわからないと言う。全ての面で、かなりのスピード、高さが要求され、技術の進歩が桁違いだと言うのだ。従来のクラシックバレエの動きだけでなく、コンテンポラリーのねじれたような動きも出来なくてはならず、さらに言えばただ単に演出を覚えるだけでなく、時には振付家と一緒に新鮮な動きを考え出すようにアイディアを出すことも求められるとか。
その他の違いとしては、彼らの年代のダンサーたちにとってインターネットの影響力が大きいという指摘もある。例えば、ポルトガル、リスボン出身のSambéは劇場ではなくYouTubeで初めてバレエと出会い、ダンサーを目指したと言う。
そんな彼らにとってSNSが重要な発信源であることは自然な成り行きと言える。ゴージャスな肉体美と同時に見せるおしゃれなスナップ写真、ダンサーたちのインスタでは超人的なテクニックの秘密に迫る写真やバックステージでの華やかな集合写真などが人々を惹きつけている。
ロックダウンで自粛中の彼らだがCorraresと彼女でプリンシパルダンサーのFrancesca HaywardはFBで見事なピルエットを披露、Ballと彼女のダンサーMayara Magriは公園での筋力トレーニングをアップしている。
Sambéは絵画とガーデニングに精を出し、ロックダウン前から取り組んでいる新しい振り付けも進行中だそうだ。
確実にバレエはこれまでのトラディショナルなイメージから変化の過程にあるようだ。Sambéは「芸術はまだまだ未発達な状態だと思うよ。まだまだ探れる部分が多くあるはず。世界で何が起きているのか、政治的からアートまで幅広く検索してそれらをバレエに持ち込む。そうなるとアーティストとして様々な可能性が出てくるよね。。舞台上で皆が同じようにお綺麗でいるだけじゃなくて、可能性はもっともっと色々あると思うんだ。」
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伝統のイメージが濃い英国ロイヤルバレエだが、21世紀の歴史にはそこにDiversity(多様性)の文字が加わりそうだ。