サイモン・スティーヴンスの「ハイゼンベルク」をダブルで楽しむ

Four actors of Heisenberg -Ryo, Kojima, Kamijo and Hirata

 

Casts of Heisenberg

(c) Nobuko Tanaka

 

英国演劇界の至宝、日本にも多くのファンを持つ劇作家サイモン・スティーヴンスによる、もう若くはない男と女の予期せぬ出会いからの成り行きを描いた二人芝居「ハイゼンベルク。」2015年6月にオフ・ブロードウェイで幕を開け人気を博し、その後劇場を移して上演を続け、アレックスを演じたデニス・アーントがその演技でトニー賞の主演男優賞ノミネートを果たしている。

今回が日本初上演となる「ハイゼンベルク」だが、プロデューサーの「男性と女性という違った性の演出家にこの男女の会話劇を演出してもらい、男女それぞれがどのように会話の余白部分にアプローチするのかを見てみたかった」という発案により、2人の新鋭演出家—小山ゆうなと古川貴義—が2つのチームに分かれ、別々のキャストによる別バージョンを日替わりで上演するという、新たな楽しみが加わった公演とあいなった。

40代のアメリカ人女性ジョージーと70代の肉屋を営むアイルランド人男性アレックスは人でごったがえすロンドンの主要駅、セント・パンクラス駅でちょっとしたアクシデントがきっかけで言葉を交わすこととなる。副題としてドイツの物理学者ハイゼンベルクが提唱した「不確定性原理(The Uncertainty Principle)」がついているように、多くの不確定要素を含んだ男女関係から、ストーリーは予測不能な展開をみせていく。

Yuna Koyama team casts

(c) Nobuko Tanaka

 

今回、小山チームのアレックスを歌手で俳優、ミュージカルで引く手数多の上條恒彦、ジョージーをモデルで女優、多方面で存在感を示し活躍しているりょうが、そして古川チームでは演劇界で長く活躍している熟練俳優、平田満がアレックスを、話題の舞台に出演し続けている小島聖がジョージーを演じる。

Takayoshi Furukawa Team

(c) Nobuko Tanaka

 

開幕を前に行われた記者会見に登壇した4人の俳優は偶然出会った大人の男女が交わす、謎を多く含んだ不確定要素だらけの会話劇にどのように取り組んでいくのか、それぞれの思いを語ってくれた。

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「生き別れた息子を探したい」と話す饒舌で気まぐれなアメリカ人女性ジョージーを演じるりょうと小島。

りょうは「とにかく彼女は衝動的な言動が多くて、それによって観客が混乱させられていくんです」「どうやったらそんな流れになるの?と思うほど、スリリングな感覚で観続けることができると思います」と話す。

一方小島は「息子のことも嘘ではないか、と疑うほど何が本当なのかはわからないなと思いながら読みました。でも、それはそれで、わからないものはわからないままで良いのではないか。。。この戯曲は余白、空白がとても多いのですが、そこが面白いと感じています」と観客の想像力に委ねて、書かれていることを演じることに専念すると言う。

コロナ禍で数本の出演舞台が中止となり、また病院での隔離も経験した際に「ハイゼンベルク」の初期台本を手にし、「この戯曲を読むのが唯一の楽しみで、読めば読むほど良い翻だなと思ったんです」とこの戯曲との出会いに感謝の意を述べた上条。

「すごく素敵な会話だな、と。まだ噛み合っていない段階から、二人の会話が上手なんですよ。こういう会話を若い頃からずっとやれていれば、人生も素敵なものになっていたのでは、と思いました。この会話を舞台できちんと成立させるようにしたいですね。」

物理学者の名前を冠した戯曲なので科学者同士の難しい話かと思ったら、並の人間、もしかしたら一般人よりもさらに陽の当たらないところにいる中年・初老の男女の話で、「そんな不遇な境遇の二人にとって、自分の言うことを聞いてくれる相手がいるということがいかに重要なことか、と言うことを考えさせられた」と話す平田。「まず、75歳の男のまともな恋愛を扱った劇というのが少ないと思います。そう思うと、この戯曲を読んでいて、芝居もまだまだ捨てたものじゃないな、と力づけられました。」

 

7月29日から「中野 ザ・ポケット」の小劇場で幕を開ける「ハイゼンベルク」。2人の男女の演出家、そして2組の個性的な役者たちの組み合わせキャスト、とこれはこの企画の意図に乗っかって、見比べてみる価値はあり、と言えるのでは?

 

「ハイゼンベルク」7/29(金)-8/14(日)— 2チームが交代で日替わり上演。

詳細はhttps://www.consept-s.com/heisenberg/

 

※ 注 出演者の体調不良によりAチーム(小山ゆうな演出、上條恒彦&りょう出演予定だったチーム)の全公演のキャンセルが発表された。

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