再開したウェストエンドはどのように変わるのか

West End theatre in London

(c)anastasiia-pyvovarova / unsplush

(The Guardian新聞より)

英国の大手の劇場経営者たちはコロナ後の演劇ビジネスの回復に向けて、多額の資金を投じた、例えばアンドリュー・ロイド・ウェバーの新作ミュージカル「シンデレラ」、「アナと雪の女王(Frozen)」、「バック・ツゥー・ザ・フューチャー」などの大型規模の作品に大きな期待を寄せている。その一方で、コロナによる生活様式の変化から週の半ばに行われていたマチネ上演は今後なくなる方向に向かうという。

政府のコロナ関連支援が大幅に遅れたことによりパンデミックによる悪影響を最大に被った英国の演劇界。それでもウェストエンドの劇場オーナーたちはリスクを負ってでも巨額の資金を投じ、大掛かりな新作上演や人気作の再演によって演劇界を盛り上げていくという決定を下していて、そこには微塵の迷いもなかった。

政府がワクチン接種を2回終えた人たちに関しての隔離規則を緩めてから2週間も経たたずに、ウェストエンドでは上記の「シンデレラ」「アナと雪の女王」「バック・ツゥー・ザ・フューチャー」、そして「ハミルトン」「マンマミーア」などの舞台が次々と開幕した。さらに年末へ向けて、今後は「ムーラン・ルージュ」「ライフ・オブ・パイ」「マティルダ」「ウィキッド」「ブック・オブ・モルモン」「Only Fools and Horses」「ハリポッターと呪いの子」などの超娯楽人気作が幕を開ける予定となっている。

「ワクワク感、そして劇場再開に対するお客様の反応はかなりすごいことになっていますよ」と話すのは8つの劇場を有し、数々のスーパーヒットを手がけているキャメロン・マッキントッシュ・グループの副会長ニック・アロット。「劇場再開初日の様はまるでローリング・ストーンズかビートルズがステージに戻ってきたかのように観客たちは大興奮でした。」とは言え、まだまだ気を抜けないと彼は言う。

5月に50%の観客数という制限付きで再開を果たし、その後7月19日のソーシャルディスタンス撤廃により通常の状態に近づいた演劇界。その一方で「pingdemic*」により、再開を果たした劇場でもその後、ショーの中止に追い込まれるケースもあり、業界全体としてコロナ後のビジネス再開に関しての再考が求められている。

*pingdemic ーーーNational Health Service(国民保険サービス制度)が運営するappにより、新規陽性者の濃厚接触者にあたると思われる人にはその旨の通知がスマートフォンに届く(その通知音ping♫からこの名称ができた)サービス。その通知が届いた人には10日間の自主隔離が求められる(法的な拘束はなし)。そのため、ソーシャルディスタンス撤廃となったものの、職場での人員不足から英国の多くのビジネスがいまだに停滞状態にあると言う。

「昨年の夏から映画、テレビ界で施行されている国による(Covid-19に対する)保証制度を演劇界にも適用して欲しかったと思います。実際、多くの演劇プロデューサー達がこの保証なしでリスクを抱えてきました。政府の保証制度はそのコストと限度額の観点から演劇には適したものとは言えませんでした。例えば、キャストやスタッフに感染者が出たことで上演中止になったとしても、政府が再度シャットダウンを行わない限り、その分の金額保証はされません」とアロット。

劇場再開後、観客動員数が伸び続けている現状を鑑みると、シアターゴーアーズにとってはそのような内情はあまり関係ないのかもしれない。

「バック・ツゥー・ザ・フューチャー」、そして「グリース」の英国ツアープロデューサー、コリン・イングラムは「これまでの鬱積した(劇場へ行きたい)欲求の高まる波に乗っているといったところです。観客は18ヶ月間閉ざされていた劇場の客席に戻って来ました。金銭的に余裕のある人たちはまさにエンタメ、ライブの観劇を待ち望んていたのです」と話す。

商業的な勝算はその演目がどれほど長く上演されるのか(ロングラン)にかかっている。国内の観劇ビジネスが好調という中、これまで自宅もしくはその近辺で過ごすことを課せられてきて、悶々と過ごしてきた人々の欲求はさらに多く日曜日のマチネ上演をすることを望んでいる現状がある。Covidの旅行規制により、海外からの観客がほとんど期待できない今、上演スケジュールの大幅な見直しが検討されているのだ。

「ウェストエンドにおける上演スケジュールの大胆な変更が見込まれていますよ」と話すのは演劇・ライブイベントのマーケティング会社Dewyntersの代表マット・ハイフィールド。

「平日の観客層が劇場に戻ってくるまで、平日のマチネの回数を減らして、その代わりに日曜日のマチネ上演を増やすつもりです(以前は日曜日は劇場の休館日であることが多かった)。」

ユニオンとの交渉の結果、これまで日曜日(安息日)ということで日曜の上演の際に受け取っていた特別手当を劇場スタッフや演者たちは(この非常時の間は)受け取らないで日曜マチネに参加、その代わりに月曜や火曜の午後に上演されていた平日マチネを取りやめるようになってきている。というのも、平日マチネは海外からの観光客に人気が高かっのだが、今はその観光客がほとんど劇場街にいないからだ。

アロットは—世界の航空路が回復しない限り、ウェストエンドに来る海外からの観光客はまず望めないだろう、と話す。

「我々は政府のガイドラインより厳しいコロナ対策を講じていくつもりです。ですが、実務面から言うと、コロナ感染のチェックは全ての場面、人に行われるわけではありません。そこで業界としてスタンダードなコロナチェックの制度を決める必要があります。シアターは確実に戻ってきています。我々は日々この状況を前へ進めるべく一生懸命に務めています。」

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