シアターは確実に違うものになった

 

 

 

 

英国の有名演劇批評家Lyn Gardnerが2021年の英国演劇界を大予想。(The Stageより)

A woman sits in a theatre

(c) Vladimir Fedotov / Unsplush

演劇界にとって2020年は大惨事とも言える年だった。演劇業界全体、そして演劇人一人一人にとってもその事態は同じで、確かなこととしてはその状況が以前に戻ることはない。なぜなら物事が同じであり続けることは決してないからだ。

ならば、と言うことで私たちは前を向くしかないのだが、でも2021年は決して平坦なものとはならないだろう。もしかしたら2020年よりも厳しい面も出てくるかもしれない。昨今始まったワクチン接種が劇場の全面的な再開をすぐにもたらすような魔法の手段でないことは明らかで、そうなると失職する人の数はさらに増える。それも中でも特に不安定なフリーランスの働き手たちの多くがその憂き目に会うこととなる。そのような状況が今後1年以内に終息する見込みもない。

多くの劇場が状況にあわせての制限ルールの設置、座席数の増減などを行って行かなくてはならないため、以前のように従来通り、計画通りに上演することが難しくなってくる。昨年のダメージをすぐに取り戻せるわけもなく、様々な局面でその痛手がジワジワときいてくることになるだろう—例えて言えば、果たして観客は劇場へと戻ってくるのだろうか、彼らはどのように観劇を楽しむのだろうか、、とか、あるいは演劇界の失業者の増加はどのようにセールスに影響してくるのか。さらにはブレクジット(英国のEU離脱)がツアー興行や多国間でのコラボレーションに与える打撃、困窮する地方行政がアートに予算をつけるだろうか、と言った問題などだ。

このような状況で悲観的になるのは簡単だ。しかし2020年が何かを私たちに教えてくれたとすれば、それはシアターがそしてシアターに関与する働き手たちがいかに困難にめげることなくそれらに順応する機知を持ち得ているかということだろう。様々な事が出来なくなった中、それらに立ち向かい、一時的に活気を失うことになってもシアターの灯を絶対に消さないという事を成し遂げられる兆しは見えている。

この未曾有の有事に表立って働きかけてくれた優れたプロデューサーやアーティストたちのみならず、ウィッグ(カツラ)製作者、広告担当者、ムーブメント指導者などの類稀なる才能を持ったシアター製作者・技術者たちが誰もが経済的に困難な中で自分たちのまわりだけでなく他の分野のフリーランスの人たち、演劇にとって欠かせない存在である彼らに手を差し伸べていた事は忘れられない出来事だった。

また、大規模シアター、そして小さな規模の演劇カンパニーやそこのアーティストたちが彼らのコミュニティーに限定された要望に快く対応したり、地方機関からの助けを求める声に応えたりしていたのも肯定的な結果として受け止めている。コロナ給付金を支給する組織はフリーランス労働者たちへ早急に支払いを行い、アーティストたちがアーツカウンシルやユニバーサルクレジットの給付金申し込みの援助を行っていた。

芸術監督たちはこの困難下で職場を失い給付金を受給しているスタッフやフリーランススタッフに手紙を送り、時に電話をかけて励ましている。その活動はパンデミックが始まった当初だけでなく今でも続いている。演劇のデジタル化に— その実践を含め、果敢に挑戦を続けている人たちは日々「ライブ」の意味、意義について自問を繰り返している。劇場が閉まっている今でも働き続けているクリエイティブラーニング・エンゲージメント部署の人たちはコミュニティーに最も密接に関連している人たちの存在を認識し、彼らこそが自分達にとって最も重要な人たちであることに気づいたのだ。その意識は今後も持続していかなくてはらないであろう。

顧客であった人々や地元の人たちが彼らの近所にある劇場のドアにチェックを差し込んだり(寄付をする)、キャンセルチケットの返金を求めずにそのお金を寄付として寄贈したり、何度かキャンセルされた演目にも関わらず再度そのチケットをブッキングしてくれる顧客がいることも私は知っている。もしそのような観客の寛大さ、親切についてもっと知りたいと思うならば、プロデューサーAdam Lineのツイッターに詳しくその様子が綴られているのでのぞいて見ることをお勧めする。

去年劇場が閉鎖された中で、多くの劇場や演劇従事者たちは自分たちのことを不甲斐ない、必要とされない役立たずと感じてきた。だが一方で、劇場が必要とされた、必要とされるようになったという例も多く報告されている、そしてそれは自らのコミュニティーに限らず他の場合でも、ということだ。つまり劇場が自分たちの事、例えば次の上演演目や興行売上金のことだけでなくそれ以外の事に目を向ければ劇場は様々なところで役に立つということなのだ。

2020年のその異常とも言える状況下で劇場は必然的に自らについての問いを強いられるようになった。その目的、劇団、劇場とは何のためにあるのかを深く掘り下げ、真摯に考えるようになったと言える。この度のパンデミックは2021年以降この間に積み上げてきた知識・経験を元に、これまで進めたくても遅々として進んでこなかったアクセシビリティー、平等性をいかに改善していったら良いのかを考え直す機会を与えてくれた。

直近の数ヶ月はまだまだ難しい状況であることは明らかだ。とは言え、幕は必ず開く。その時観客たちは劇場の暗がりの中で楽しみや癒しを見つけ、シアターは新しく回復した人々のパワーを得るだろう。引き戻る道は無い、未来が我々を手招きしているのだ。それに向かって期待をするだけだ。

 

 

 

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