Look down upon theatre auditorium

コロナ後の劇場形態は?

Berlin River boat
(c) Brodie Vissers

ドイツの劇場では「前の席との間隔を広め、インターバル無しで上演」をコロナ後の演劇上演の指針とする動きが出でいる。

(The Guardian記事より抜粋)

ドイツではほとんどの劇場が再開の決定を待ち閉鎖している一方で、ベルリンでは屋外のイベントに関しては6月2日から実施可能の決定を下している。とは言え、建物内の劇場に関して言えば、9月頃までは上演再開の見通しは低いと見られている。

そんな中、ベルリンの主要劇場の一つBerliner Ensembleがコロナ状況下のソーシャルディスタンを意識した新しい上演、観劇の形を示した。

通常700席ある劇場の観客席500席を取り払い、政府が推奨するところの1.5Mのソーシャルディスタンス間隔を確保した。残した客席の70%がペア席(2席並んで配置)である。

「横一列、そっくり取り外したり、列の中でも数席を使えなくしたりしてみたのですが、なんだかとてもスカスカしてしまいました」と話すのは芸術監督のOliver Reese 。

9月4日の再開を期待しているのだが、その際には休憩時のトイレ混雑を避けるため、インターバル無しで上演する予定だ。その代わりと言ってはなんだが、上演中でも各自自由にトイレに行ってもらうように勧めると言う。そのほかの対策としてはステージと最前列の観客席の間隔を3Mとる、上演中も空気の換気のためいくつかのドアを開け放しにする。

州から援助を受けているため、チケット代は3月13日のクローズ前からの金額を据え置くとReeseは話す。

一方、ベルリンのもう一つの老舗劇場Shaubuhne劇場の芸術監督、日本でもお馴染みのThomas Ostermeierは今後の対策については検討中だと話す。Berliner Ensembleのように大幅な客席撤去をするか、アクリル板を設置してなるべく席を残すか、チームで検討しているところだと言う。10月に再開後(予定)はプログラムを従来のものから大幅に変更してコロナ状況にあわせた内容にする。まずスイス人演出家、昨年のあいちトリエンナーレで多くの演劇ファンの期待に応えたMilo Rauによるモノローグ作品で再開、その後は劇場のレギューラー俳優であるLars Eidinger主演のイプセンの代表作「ペール・ギュント」の一人芝居へと続くということだ。

Berliner Ensembleのプログラムに関しては予定されていたベルギー人の演出家、劇作家Luk Percevalの新作は大掛かりな作品のため延期が決まった他、レパートリーの一つである「マクベス」に関しては劇中での接触シーンが多いため当分レパートリーから外されることとなった。

それでもドイツ演劇の慣習である劇場付きの役者、というシステムが今回の伝染病ではプラスに働いたとOstermeierは分析する。なぜなら作品ごとの個人契約である英国などでは上演中止になった場合でも役者には出演料を払わなければならないが、ドイツでは劇場と役者が繋がっているため、彼らは自宅待機中として給料が保証されるからだ。

Ostermeierはシェイクスピアの時代を振り返り、「1603〜1610年の間ペストの大流によってロンドンのグローブ座は度々長期の閉鎖を余儀なくされたけれど、それでも観客はその後劇場へ戻ってきたんだ」と今回の危機も乗り越えられる、と力強く語った。

「この伝染病でも演劇が生き残ることを願っているよ。劇を観て、誰かと一緒に笑ったり、話したり、人々のそんな欲求がそう簡単に息絶えることはないと思うから。」